2017年2月6日月曜日

JASRAC音楽教室から著作権徴収に関する論点整理

JASRACが音楽教室から著作権を徴収するというニュースが出て、ネット上で話題になっている。 


 アーティストやクリエイターから反対の声も上がっている。



 作詞家作曲家や音楽出版社からJASRACに管理が信託されている楽曲については、アーティストの個別の希望を反映することは制度的にできないけれど、アーティストやクリエイターの発言には影響力がある。

 一方で、JASRAC関係者からも発言もあったようだ。

 いつものことながら著作権のことになると誤解や思い込みによる言説も多いので、僕なりにポイント整理したい。JASRACはネット界隈でパブリックイメージが悪すぎて、正当に評価されていない部分もあり、擁護したい部分もある。

 僕なりにまとめた論点は以下だ。

1)少人数、しばしば1対1の音楽教室で「演奏権」を適用するのが適切か?

 狭く捉えれば、この件のポイントはここになる。ただ法律論になると思うので、弁護士などの専門家の見解を待ちたい。個人的には、無理筋な印象を持っている。

2)音楽教室の音楽ビジネス生態系の効用を認識しているのか?

 当たり前のことだけれど、音楽はファンがいてはじめて成り立つビジネスだ。楽器の演奏を習っているユーザーは、音楽好きが多いだろう。その世界に制約を課すことが音楽ビジネス生態系を俯瞰して見た時に本当にプラスなのか?
 また、例えば音楽教室の先生がJASRAC管理外楽曲を選んで指導することになった場合のJASRAC会員へのマイナスなどへの想像力はあるのか?
 このまま強行すると、クラシックなどの著作権切れの楽曲と、JASRACに預けてない楽曲を選んで音楽教室が行われることもあり得る。縛りすぎると、使われなくなるという構造は理解しておくべきだろう。

3)演奏権の徴収分配がJASRAC独占で、高い手数料が放置されている。

 実業者としては、これを一番強調したい。カラオケとコンサートをセットにしてか信託できず、JASRACが独占状態で高い手数料(23%)が据え置かれているのは大問題だ。JASRACの論理は、田舎のレーザーディスクカラオケの事業社からまで徴収しようとしてコストが掛かっているみたいな話なんだけれど、それなら、通信カラオケ事業社(もう第一興商とエクシングの2社しか無い)の案件の徴収だけに絞るとか、コンサートは自己管理するとかいう「メニュー」を用意するべきだ。
 昨年合併してできたNexToneがまもなく演奏権も取り扱い始めるだろうから、そうすれば解決する方向にいくだろう。JASRACが今の著作権使用料規定を続けるなら、まともな音楽事務所は、演奏権をJASRACの管理から外すことを選ぶはずだ。
 演奏権に関しては、それほど多額になるとは思えない「音楽教室に手を付ける前にやることあるよね?」というのが、一般的な音楽業界人の感覚だろう。

4)JASRACは21世紀のビジョンがあるのか?

 音楽著作権は、既に国際競争が始まっている。音楽視聴がAppleSpotify、グーグル、アマゾンなどのグローバルプラットフォーマーが中心になっていて、おれまでの国ごとの著作権徴収分配という仕組みが、時代遅れになり始めている。有料ストリーミングサービス、ネットラジオ、YouTubeなどサービスの形態ごとに、著作権と著作隣接権(レコード会社やアーティストの権利)の料率が違うこともあって、パワーゲームでの戦いが実は既に始まっている。そんな中で、日本人の音楽をきちんとビジネスするために、海外でも稼げるためにやるべき課題は大きい。シュリンクする国内市場で「新商品」を無理くり作ろうとするJASRACの姿勢は、「経営的な」視野の狭さを感じて残念だ。

5)著作権信託とは「信じて託されている」という意味

 前述の外部理事の方も、発言自体は正しいけれど、全体的なトンマナに大きな欠如を感じる。それは、JASRACは著作権を「信託」されているという事実だ。信託とは、「信じて託する」という意味で、JASRACに預ければ、正しく徴収し、分配するという信頼があったから、これまで多くの音楽家は楽曲管理を託し、事業社は使用料を支払ってきた。3年に一度(※注)しか変更できないけれど、JASRACから管理を外すことはできる。音楽家と音楽ファンから信頼を得ないと、作詞作曲から信じて託されることがなくなる(管理楽曲が減る)ことを知るべきだろう。今回の騒動は、現在のJASRACの方針にそういうリスクがあることを示したと思う。
 そもそもJASRACの理事会は、2/3が作詞家作曲家が務める(1/3は音楽出版社)高齢作家の方が多く、意思決定が保守的になりがちな構造を持っている。1939年設立だから、インタネットなど関係ない時代に作られたルールが積み重ねられている。著作権徴収分配を「取れるところからできるだけ沢山とって、アンフェアにならない程度に大体で分ける」というカルチャーを持つようになった理由は理解できるが、もう時代が許さない。全曲報告で完全透明な分配ができないなら徴収しないくらいの姿勢(合併前のJRCは実際そういう方針だった。)がないと、今の時代は支持をされないだろう。JASRACのネットユーザーの不信の根っこには、分配が完全透明でないことに起因している。

 JASRACには歴史的に大きな功績があるし、力が弱くなることは日本の音楽家、音楽ファン、音楽ビジネスに携わる者にみんなにとってマイナスだ。時代にアップデートした戦略的視点を持たないと自らが衰退するという危機感をJASRAC関係者は持ってほしい。

●ニューミドルマンラボ
 最後は告知。次世代の音楽ビジネスの活性化と人材育成のために、僕が継続して取り組んでいるいるのがニューミドルマンラボだ。4月1日には、ジェイコウガミ(音楽ブロガー / All Digital Music)、柴那典(音楽ライター / 「ヒットの崩壊」著者)、梶望(ユニバーサルミュージック / 宇多田ヒカル、AI、GLIM SPANKYなどの宣伝プロデューサー)の3氏を迎えた座談会を予定しているので、興味のある人は足を運んで欲しい。間もなく情報公開予定なので、このサイトでチェックしてください!


追記(2017年2月8日):JASRACからの管理変更は3年に一度に変更になっているとの指摘があったので、訂正します。
また、演奏権の手数料に関してもご指摘ありましたが、規定では26%ですが、実効料率は23%と記憶していたので(こういうわかりづらさもJASRACのよくないところですね)書いています。正確な情報をお持ちの方がいたら教えて下さい。

2017年1月2日月曜日

2016年のエンターテックニュースTOP20+α

 ブログはできなかったけれど、毎週月曜日の無料メールマガジン「音楽プロデューサー山口哲一のエンターテックニュースキュレーション」は、おおむね毎週発行できた。
 2016年のエンターテック関連のニュースから1年間の極私的TOP20+αを紹介した、よければまぐまぐから発行しているメールマガジンも読者登録をお願いします!

<第1位>
●ノーベル文学賞にボブ・ディラン氏 

 ニュースが多かった今年ですが、今年のNO.1は、何と言ってもこれでしょう。歴史に残る大事件ですね。文学というカテゴリーでポップミュージックのシンガーソングライターが最高の栄誉を得たことになります。びっくりですね。

 日本の純文学界の系譜と無縁だった村上春樹が取るのも日本の芸術史的に事件ですが、ボブ・ディランは世界史レベルですね。この後も表彰式を欠席するなど話題を振りまきました。ノーベル賞授賞式より優先される「先約」って何なのでしょうか?知りたいですね。
 そして、こんなニュースもありました。ストリーミングサービスでの楽曲の再生回数が、注目度に関する新たな指標になっています。再生回数がオープンなのもSpotifyの良いところです。
・ボブ・ディランのSpotify再生回数が500%アップ。ノーベル文学賞受賞を受けて

<第2位>
●音楽配信のSpotifyが日本参入。広告付き無料版と月額980円の有料プラン

 苦節4年という感じですか、やっと真打登場です。素晴らしいプロダクトなので、必ずや日本の音楽市場を活性化に貢献してくれると思います。 関係者の皆さん、まずはおめでと
うございます!!
 Spotifyの登場でやっと日本の音楽サービスも世界標準になります。日本の音楽市場を活性化してくれることは間違いないです。

<第3位>
●ピコ太郎「PPAP」が米ビルボード77位 松田聖子以来26年ぶりの日本人トップ100入り

 驚きました。YouTubeの破壊力ですね。ただ、今回も様々な形の「カバー」が伝搬力になりました。時代性を感じます。
 YouTubeの再生回数だけでは広告収入の分配があるだけですから、これからピコ太郎がどんな活動をしていくのか注目です。アメリカの地上波TVに進出とかなら面白いですね。
・ユーチューブ:PPAP年間世界2位 日本人歌手で初
 素晴らしい!ですが、 過剰評価せずに、このラッキーな現象をピコ太郎がどんな風に戦略的に活かしていくか、注目したいです。

<第4位>
●クラブ終夜営業 23日からOK 

 偉大なる一歩。関係各位の努力に最大限の賛辞と感謝を捧げたいです、日本のカルチャーを救った皆さんです。女性が接客するお店とDJが新しい音楽を提供するお店の区別が法律的にできたことには意義があります。
 クラブは、萌芽する前の様々なカルチャーがクロスして新しいムーブメントを産むインキュベーション装置です。都市の魅力を高める観光業とにとっても重要です。日本が観光&文化立国するためにあと10歩位進めないといけませんね。

<第5位>
●BABYMETAL、新アルバムが米配信チャートで一時3位

 アメリカでは日本と違って、ストリーミングに押され始めているとはいえ、iTunes Storeは、デファクト的な存在で、メジャーなサービスですから、この総合チャート3位は本当に立派ですね。
 BABY METALの成功は、2つの文脈をまとめたことにあると思っています。一つは、いわゆるクールジャパン。日本のポップカルチャーの一つであるアイドルという流れ。もう一つは、メタルロックの流れです。
マイナージャンルは、グローバルに繋がりを持っています。そのグローバルニッチな音楽ジャンルのファンからもBABY METALは支持されて、大きなロックフェスにも招聘されています。プロデューサー陣の「メタル愛」が本場のマニアにも刺さったということなのでしょう。
 2つの文脈を掛けあわせることで、「現象」となりますし、メディアも取り上げやすくなります。ビジュアル系のバンドが海外進出が多いのも同じ理由です。
 日本人アーティストの海外進出の成功方程式として、ブローバルニッチジャンル×クールジャパンというのは意識していきたいですね。

<第6位>
●米スナップチャットが非公開ベースでIPO申請-関係者 

 おそらくsnapの経営陣が見ているのは、「スマホの次」のコミュニケーションプラットフォームでしょう。写真が消えるという発想は斬新でも、snapchatだけなら、ラッキーパンチと言えます。でもメガネにカメラ仕込んだSpectclesは面白い、これが当たれば、見晴らしが悪いウェアラブルの分野で抜きん出る可能性があります。
プロダクト開発センスは抜群なので、期待しています
・Snapchat、Spectclesメガネの自販機をグランドキャニオンに設置 
 これもイケてる施策。
・Snapchat、Twitterをデイリーアクティブユーザー数で超える、Bloomberg報道
 Snapchatの勢いを感じさせると同時に、Twitterの停滞感を示すニュースですね。
 写真やメッセージが自動消滅するのが特徴のSnapchatはアメリカで若者を中心に大人気で、日本でも広まり始めていますね。

<第7位>
●Google翻訳,ニューラルネットワークが導入されて精度が大幅上昇 

 びっくりしました。久々に技術の進歩に痺れた気がします。英語力が足らない人にとって、少なくとも英語の勉強の仕方が変わりますね。
 ワープロが普及した時に、漢字の書き方を覚えなくても読めれば大丈夫になった、というのと似ている気がします。翻訳しやすさを意識ながら日本語を書いて、出てきた英語をチェックするというやり方で、英文メールはほとんど問題無さそうです。単語のニュアンスとか英語の言い回しはある程度知見が必要ですが、英作文的な勉強はだいぶすっ飛ばせる印象です。
 英語のメールがストレスだった僕にはめちゃめちゃ朗報です。そのうち、カンファレンスの同時通訳もgoogleになりそうですね。マジで、久々に痺れる技術の進歩です。しかも超助かります。

<第8位>
●HTCは自社のVR技術とハードウェアを2017年までにアジアの“数千の”ゲームセンターで展開する
●HTC、巨大VRアーケード「Viveland」を台湾にオープン

 VRは中華圏で広がっていきそうな様子です。派手好きで新しもの好きで、資金が潤沢な中国人たちがVRを牽引しそうです。コンテンツ力、企画力を活かしつつ、プラットフォームを牛耳られないように、日本企業も頑張って欲しいです。
 ゲームの分野、特に家庭向けではプレステVRが優位な展開はするはずなので、そこを活かしたいですね。HTCの動きも、スペックの高さを活かして、家庭内ではなく、街中を主戦場にしようとしているように見受けられます。アーケードゲーム系の企業には脅威ですね。

<第9位>
●radiko、過去番組のタイムフリー聴取とシェアラジオの実験を開始へ

 あまり話題になっていませんが、素晴らしいニュースです。時代にあったテクノロジー活用の体験を提供してくれますね。
 Radikoの伸長は、だめになったのはラジオ受信機による聴取という行動であって、コンテンツとしての番組は価値があるということを証明してくれていますね。

<第10位>
●世界の最重要「音楽フェスティバル」 3位にフジロックが選出 

 嬉しいニュースですね。フジロックは本当に素晴らしいフェスティバルだと思います。インバウンドにも、もっと活用したいです。

<第11位>
●売上はすでに約1億円以上か!?『ポケモンGo』、米国アプリランキングで1位獲得 
●「Pokemon GO」、iOSで平均使用時間が「Facebook」や「Twitter」を上回る

 アメリカでポケモン旋風が吹き荒れています。このゲームの大人気がAR(拡張現実)を一般化するのでしょう。日本のキャラクターの強さとGoogleのネットワーク技術力の融合ということでしょうか?
 もしかしたら日本のコンテンツがグローバルに勝つ時のパターンとして捉えるべきのか?そんなことを考えています。個人的にはPokemon GOの画像を観ると6年前のセカイカメラを思い出します。

<第12位>
●逃げ恥「恋ダンス」の踊ってみた動画、YouTube上のアップが公式OKに

 このニュースを「ビクターの英断素晴らしい!」と一瞬でも思ってしまうのは、日本の音楽業界に毒されているのだと反省します。グローバル基準では、ユーザー動画を誘発しつつ、話題とともに広告収入を得るのは当然のことですね。
 ドラマの終了後も星野源のアーティストPRのために、許諾を継続することを望みます。

<第13位>
●ゴールデンタイムでNHKが視聴率1位。テレビは新しい局面を迎えている。

 これはびっくりしました。けれど、ここから読み取るべきなのは、「世帯視聴率」、「ゴールデンタイム」という概念が既に指標としてあまり意味がない、少なくともTV局の編成や制作を決めるための最大のポイントではなくなっているということを関係者が認識するべきことだと思います。
 大企業の宣伝部、広告代理店、TV局の営業、編成、経営陣などが、時代に即したビジネススキームにむけて真摯に再構築することが、必要なのでしょう。
 それにしてもフジテレビ黄金時代の視聴者としては、落ち込みの激しさに驚きます。

<第14位>
●世界で最も魅力的都市は?1位東京、2位京都 米旅行誌
●都市総合力 パリ抜き東京3位  

 都市ランキングには様々な指標がありますが、東京の評価は高いですね。東京五輪までは放って置いても注目はあがっていくでしょうから、問題はその後ですね。
 2020年までに日本人のマインドや、決済や外国語での説明や、その他様々な仕組みを「観光立国」モードにすることが必須です。

<第15位>
●自動運転タクシー 2020年までに実用化へ

 国際水準で見て、スピード感のある判断ですね。良いと思います。東京五輪に間に合わせましょう。渋滞解消やWifi環境整備などもセットでやる必要が出てきます。国際都市としてTOKYOのデジタルインフラ環境が良くすることは大切ですし、都市のブランドとしても、自動運転タクシーをいち早く実現することは意味があります。
 既存の運転手の雇用は問題になるでしょうが、日本の発展のためには、既得権を守る方向にいってはいけません。ロボティクス(ロボット工学)とデータ分析(人工知能)が進化した時に、人間がやるべきことは何なのか、社会全体で考えるべき時代になっています。日本は移民の代わりがロボットという国になるのかもしれませんね。

<第16位>
●人工知能作品に「著作権」 音楽や小説など、政府知財本部方針 

 まだ産業規模も商品形態もわからない状況ですが、この段階で政府が方針を出したことを高く評価したいです。
 僕もAI作曲のプロジェクトに関わってみたいと思っています。

<第17位>
●サイバーエージェント、AbemaTVが1日1000万視聴、WAU100万超と好スタート! 藤田社長「事業化に確かな手応え」

 UGM型ではない、「ユーザー受身形」の動画サービスとして、「LINE LIVE」と「Abema TV」の対決という様相になっていますね。スマホ世代を取り込めると地上波テレビ以上の影響力を持つようになるかもしれません。大注目です。
 スマホ時代のUI/UX設計については、他のIT企業と比べて、サイバーエージェントが優れている印象があります。藤田社長が若手社員への権限委譲をしているのが功を奏しているのでしょうか。

<第18位>
●ドコモiモードケータイ出荷終了に思いを馳せる〜3分で振り返るケータイ文化〜

 Appleがグローバルに築き上げた、iTunes、AppStoreの生態系は故ジョブズがiモードをベンチマークして考案したと言われています。スマートフォン時代のプラットフォームの勝者です。NTTドコモにもチャンスがあったはずと考えると郷愁だけでは終わらせられないですね。

<第19位>
●アマゾン読み放題、人気本消える 利用者多すぎが原因?

 ひどい話ですね。権利者も読者も無視したプラットフォーマーの横暴です。新しいサービスを始める際にサービス事業者が守るべき最低限の信義に反しています。
 同時に、収益のほとんどを投資に充てて、赤字を厭わない経営方針のAmazonが、こういう動きをするということは、電子書籍読み放題サービスの優先順位や期待度は低いのかなと思いました。
 ちなみに、拙著も6冊ほど読み放題サービスに出ていたのですが、このタイミングで4冊が取り下げられていました。一応、人気本のカテゴリーに入ったのかって、何も得はないのに、ちょっと嬉しくなってしまいました。複雑なクリエイターの気持ちが少しだけわかった気がしました。

<第20位>
●安倍マリオ、海外の人たちが大喜び「こんなすごい光景見たことない」【リオオリンピック】 

 2020年の期待を高める演出でしたね。違和感を表明する人も居ましたが、賛否両論でも話題になる方がメリットがあるのがSNS時代です。業界人視点だと、正直「電通色」を感じてしまう部分はありますが、ポップカルチャーを全面に出して、日本をアピールする姿勢はとても良いと思いました。

<And More>  
●ハイスタ16年半ぶり新作ゲリラ発売 事前プロモ一切なしで配信時代に対抗

 話題になっていましたね。ストリーミング配信やSNSの活用に注目が集まる時代に、敢えて事前プロモーション無しで店頭にCDを置くことから始めるというのは面白いやり方です。
 もちろんご本人たちの思想の表現でもあると思いますが、僕が感じたのは強運です。時代の流れは感じられても、Spotifyの日本開始日を予測するのは不可能ですから、この絶妙のタイミングは、話題性として効果抜群です。
 成功するアーティストは「思想性×強運」が必要だし、持っているのだなと改めて思いました。

●Google脱税容疑 パリ支店捜索 

 グローバルにビジネスを展開していると、税金をどの国に払うかは、収益を残して再投資に充てためのテクニックになりますね。
 善悪論というよりは、アメリカ系グローバル企業対EU各国の戦いという見立てで分析して、日本も参考にするべきだと思います。

●Uber China と Didi Chuxing が統合される: それはタオルを投げ入れることに等しい? 

 共産党政府との関係性が重要になる中国でのインフラサービスですが、Uberは中国の同種サービスの会社と合併というのは、中国らしいできごとですね。中国人がしたたかなのか、Uberが賢いのか、「狐と狸の化かし合い」という感じもします。同床異夢でも儲かれば良いということなのでしょう。
 日本も対岸の火事ではありません。欧米系プラットフォームとのタフなつきあい方は中国から学ぶこともありますし、中国でのビジネスチャンスを逃さない姿勢も重要ですから。

<社会編>
●総人口初の減少 15年国勢調査 

 随分前から言われていましたが、実際のデータが遂に出ましたね。日本人の人口が減り始めたのです。これは大事件です。
 科学の進歩で平均寿命は伸びていくので、出生率向上が政治的には日本最大の課題ですね。移民の問題は置いておくとして、エンタメ、コンテンツ業界的には、日本市場だけ向いていられる時代は終わったことをシビアに確認するべきですね。

●EU離脱、イギリスはどうなる? 数日後、数カ月後、数年後のシナリオ

 エンターテックの話ではないですが、先週は文句無しにこれですね。ベルリンの壁崩壊以来の世界史的な出来事ではないでしょうか?イギリス国民の今回の判断の是非は歴史に委ねるしかありませんが、目先のボンド安円高などではなくロングスパンで捉えるべきですね。 スコットランドはUKを離れてEU加盟を目指すしょうし、ポンドとユーロの影響力源など、広範囲で、長期的に大きな影響が予想されます。
 日本人として、為替や株価など経済的なことだけではなく、自分たちの問題として捉えるべきと思っています。英国と日本の相違点ではなくて、共通点から考えてみることです。例えば、中国かシンガポールが経済の覇権を握って、ASEANまで取り込んだ、元(ないしシンガポールドル)経済圏を作る動きが出た時に、日本はどうあるべきなのでしょう?アジア経済圏を活性化しながら、日本の存在感を上げていくべきと僕は思いますが、今回の英国民の判断が正しいなら、違うことになりますね。沖縄問題とスコットランド離脱の相似性など、日本人にとっても他人事にはできない事件です。
⇒この件については、ブログも書きました。こちらもご覧ください。
イギリスのEU離脱は、日本人にとっても他人事じゃないよね


●トランプ氏が当選確実、クリントン氏を破る

 単純に投票数を足すとクリントンの方が多かったというデータも出ていて、選挙制度自体の問題も感じられる出来事でした。
 政治経験の無いトランプ大統領がどんな政策をとるかはまったく不明で、極端な悲観論も、安易な楽観論も禁物だと思いますが、国際社会全体がきな臭くなっているのは間違いないと思います。
 2016年僕が感じたのは、自分が生きている間に日本という国が戦争する可能性があるということ、裏返せば、これまで無自覚に戦争の可能性が無いと思っていたことに、気づきました。有識者によると、今の国際情勢は第一次世界大戦前に似ているそうです。

<残念編第1位>
●DeNAが健康情報サイト「WELQ」の広告販売を停止 
 
 がっかりする記事でした。上場企業の危機管理としても非常に稚拙だったと思います。プロ野球チームの経営まで成功させて、携帯ゲーム会社という狭いカテゴリーから脱出した経営力が評価されている会社だけに本当に残念です。DeNAにはIT企業の機動力、世の中を見る目と大企業の公共性を両立させてほしかったです。
 もう一つ思うのは、PV(ページビュー)至上主義の問題点です。極端な低コストでコピペ的な記事を投稿さえて、SEOだけ充実させて、PVを稼ぐという手法は自らのメディア価値を下げていく負のスパイラルで自殺行為だと思います。
 世帯視聴率至上主義で影響力を失っていった地上波テレビの二の舞いにならないように、ユーザーとのエンゲージメントを重視したウエブメディアを作って欲しいと思います。 
  今回の不祥事は、上場廃止になりかれない危機だという認識が必要でしょう。

<残念編第2位>
SMAP解散は「極めて残念」 菅官房長官がコメント 「特別なオンリーワン」と活躍期待

 アイドルグループの不合理な解散について、政治家が発言するのは、気分悪いです。SMAP事件は、「40代の意思決定を80代がOKしないと通せないのが日本」だというのが僕の総括です。憂鬱な気分になるはなしばかりでした 。
 個人的には、素晴らしいJポップであるSMAPのアルバムがもう作られないことがとても残念です。

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2017年1月1日日曜日

独断的音楽ビジネス予測2017〜もう流れは決まった。大変革の2021年に備えよう〜

 新年明けましておめでとうございます!
 
 見事なくらい更新が少なかった本ブログ。メールマガジン「音楽プロデューサー山口哲一のエンターテック・ニュース・キュレーションは、ほぼ毎週出したし、3月から11月までは、TokyoTech Street」というネットラジオ番組もレギュラーでやったから、情報発信はできたつもりだけれど、なかなかブログまでは手が回らなかった。ごめんなさい。

 毎年続けてきた元旦の「独断予測」は今年もやります。まずはいつものように、昨年の答え合わせから。

(予測1)
サブスクリプション型ストリーミングサービスの有料会員は200万人超へ

⇒オンデマンド型のストリーミングサービスは、日本では、Apple MusicGoogle Play MusicLINE musicAWAKKBOX、そして12月からやっと始まったSpotifyと6社ある。どこも日本での有料会員数は発表していないので正確にはわからないけれど、各所からの情報を集まると、おそらく150万人を超えたくらいかなと思う。Spotifyが夏に始まってくれれば200万人超えていたと思うけれど、当たらずとも遠からずという予測結果になっていると思う。

(予測2
●Spotify いよいよ日本サービス開始

⇒御存知の通り、これは正解。僕の読みよりは4〜5ヶ月くらい遅かったけれど、日本法人を作ってから4年と随分待たされたけれど、やっとSpotifyが日本でもサービスを始めた。欧米とは多少設定が違うけれど、フリーミアムモデル。無料でも一定のサービスが楽しめる形だ。使ってみればすぐに感じると思うけれど、音楽オリエンテッドでとても良くできているサービスだ。やっと日本の音楽消費が世界水準になって、ホッとした。Spotifyの存在を前提にした様々な音楽サービスも出てくるだろう。日本のスタートアップに期待したいし、できることがあれば積極的に応援したい。
 アメリカで老舗のNapster、フランス発で世界3位のDeezerの大手2社も日本でのサービス開始を準備中で、2017年には始まる可能性が高いと聞いている。オンデマンド型ストリーミングサービスの百家争鳴という感じだけれど、同時に、合従連衡も始まっていくと思う。

(予測3)
インターネットラジオが一般化する

⇒これは当たったかどうか、半々というところだろうか。楽天がネットラジオのプラットフォームとしてRakutenFMを開始し、TOKYO FMidioと連携するなど注目は集めたけれど、一気に普及とまでは言っていない。
 ただ、radikoが始めたシェアラジオは注目だ。放送エリア外のラジオ番組が聞ける有料会員も着実に増えているし、放送後に誰かがシェアしたら番組が聞けるというのは、魅力的だ。ラジオ受信機の価値は落ちても、コンテンツとしてのラジオ番組にはユーザーの支持があることを証明している。

(予測4)
●VR映像とライブエンターテインメントの融合が本格的に始まる

VRについては、やはりまずはゲームに注目が集まっている、おそらくアダルト映像、エロの分野が売上的にはとても大きくなるだろう。でも、ゲームセンターがVR化している現状は、エンタメ分野にも大きなチャンスだ。実際、昨年は、宇多田ヒカル、きゃりーぱみゅぱみゅなどが、360度映像の配信を行った。この予想も概ね外れないと言わせて欲しい。
 個人的には、2016年はポケモンGOの大ヒットがARを一般化した記念するべき年だ。プロデュサーとしての仕掛けところが「早すぎる」と業界で言われることが多い僕だけれど、大注目だった「セカイカメラ」と組んでアーティスト&楽曲PRをした渋谷で恋するメッセージ―AR恋文横丁―」企画は、2010年の1月に発表しているので、6年以上、早過たということになる(汗
 思い出して検索してみたら、ソフトバンクからのプレスリリースが見つかって、感無量だった。こんなことやってたということで、見てみて下さい!

 さて、答え合わせが終わったところで2017年の展望なのだけれど、特筆すべきことは無いというのが正直なところだ。もう流れは明確で、多少の揺れ幅はあるにしても、

1)オンデマンド型のストリーミングサービスが、音楽体験の主流になっていく。もちろん関連サービスが増えてくる。

2)   パッケージは微減しながらも健在

3)   コンサート市場は、外国人観光客を取り込むことで伸びていく

といった流れは、予測するまでもなく、進んでいくことは間違いない。

 ざっくり言うと、レコード売上については、2020年までには、デジタル配信とパッケージの比率が半々くらいになるだろう。配信のほとんどはサブスクリプション売上になる。売上総額が3000億円位まで落ち込むか、5000億円位まで伸ばせるか、その間というのが僕の感覚だ。
 コンサート市場も日本人だけが対象だとそろそろ頭打ちになるところだけれど、訪日外国人観光客が2000万人を超え4000万人になるというインパクトは大きい。全体の20%位まで訪日外国人比率を上げられれば5000億円も夢ではない。
 お正月ということで楽観的に語らせてもらえば、併せて1兆円が音楽産業の国内市場で、あとは輸出がどのくらいできるかというのが概観だ。2017年はそのプロセスということになるだろう。

 昨年も書いたけれど、2020年までの日本の経済の流れは概ね上向きに進むと思う。安倍政権も続きそうだし、首相が代わることになっても、政策的に大きな変更は無さそうだ。
 但し、これには功罪ある。オリンピック景気で、2020年までは従来型の仕組みが維持される。象徴的に言うと、地上波テレビは世帯視聴率を基準に大企業の宣伝費を電通が制御して番組が作られるだろうし、レコード会社もおそらく1社も潰れないだろう。本来、行われるべきな構造的な変化は、全て2020年までは先送りされる。
 ついでに言うと、日本の芸能界の構造も維持される。大騒動となったSMAPの解散を一言で総括するなら、「40代の意思決定に対して80代が認めないと通らないのが日本」ということだ。政治家まで残念とか言っていて意味がわからない。本当に憂鬱なニュースだった。
(個人的には、音楽的クオリティが高い良質のJポップがつくられるSMAPのアルバムがもう制作されないことが、凄く残念だ。)

 日本の大きな病巣の一つは、70代以上の重鎮にデジタル社会に対する見識がある方がほとんどいらっしゃらないことだ。特に芸能界、メディア業界は悲惨だ。日本の芸能界、メディア業界、音楽業界などの仕組みは、今の70代以上のみなさんが戦後に苦労して作られたもので、僕らはその土俵の上でやらせてもらっている。なので、先達への尊敬と感謝は、日本人的なマインドも含めて、決して忘れてはいけないと常々思っている。ただ問題は、重要なところで意思決定をする立場の人が、デジタル化、クラウド化、SNS化、人工知能の進化、ビッグデータ解析等々、社会の本質的で不可逆的な変化に対して、無知で不勉強なことだ。そして、おそらく2020年東京五輪までは現役でいたいと思っていらっしゃるだろう。それは誰も止められない。でもいつか引退の時はくる。
 この2つの意味で、2021年は大きな節目になる。

 それまでの4年間でやっておくべきことは多い。大きく3つ

●データベース構築

 日本の音楽に関するデータベースは内側に閉じてしまっている。著作権などの分配のためのデータベースは精緻に整理されている。ところが、それを例えばITサービス側に提供して、音楽に関する情報を活性化させようという発想は無い。レコード業界は、楽曲データは自分たちのものという感覚で、存在感が低下することを怖れて、極力閉じておこうとしている。コンサートに関しても悲惨だ。コンサート会場に関する共通データベースはない。いまやどんなコンサートがいつ行われたかということ記録に、文化的な価値がある時代なのにもかかわらず、共通データベースは存在しない。5年くらい前に調べた時に、チケットサービス事業社が個々に付番しているコンサート番号は、9ヶ月程度で元に戻ると聞いて、暗澹たる気持ちになった。誰もアーカイブを作ろうという発想が持てていない。記録をまとめて「コンサートミュージアム」があれば観光名所になるだろうに。
 大きな会場が同時に改修してコンサート会場が不足するという問題も、コンサートが日本にとって必要な文化の一部だという社会的なコンセンサスが不足しているから起きていることだ。自分達の記録も残せないようで、社会における価値を胸を張って主張ができるだろうか?
 このままだと、ここでも外資、例えばSongkickが日本のコンサート情報を一番持っているというようなことになりかねない。火急の課題なのだ。

●グローバルプラットフォーマーとの向き合い

 著作権に関する法律は、それぞれの国ごとで決まるということもあり、言葉や文化の違いや、主たるメディアがドメスティックであったことなどが理由で、音楽ビジネスはドメスティックな産業だった。インターネットの普及でこの状況は変わってしまっている。SpotifyAppleGoogleなどすべて、グローバルサービスで、契約もグローバルに行うことになる。日本のアーティストが海外で稼ぐためにも、これらグローバルプラットフォーマーと交渉力を持つことと、グロバールになっている流通で戦略的なマーケティングができることは、これからの日本の音楽業界にとって、死活的に重要だ。
 海外市場での著作権徴収については、昨年できたNexToneに期待したい。グローバルエージェントと伍する存在になって欲しい。

●中国市場への本格的な取り組み

 僕は2007年にタイでシンガーオーディションを行って、16歳の美少女と日本人と組合せてSweetVacationというグループをデビューさせた。これもまた「早すぎ」だったのかもしれないけれど、アジアでの取り組みはいち早くやってきたつもりだ。インドネシア人シンガーAiu Ratna日本に何度も呼んだ。ただ、その時のテーマは、「without China」だった。
 著作権遵守の意識が無く、共産党政府の恣意的な政治で物事が決まる、法治ではなく、「人治」社会の中国でのビジネスはリスクが大きすぎて、避けるべきだと言い続けてきた。
 その時代も終わったようだ。象徴的なのは、中国の巨大IT企業テンセントが有料のストリーミングサービスを成功させていることだ。海賊版すら買わないと言われていた中国人が定額サービスの有料会員になるとは驚きだ。
 隣りにある巨大なマーケット。政府の反日誘導などカントリーリスクは相変わらず大きいが、もう音楽ビジネスにとっても避けては通れない状況になっている。訪日外国人観光客も一番多いのは中国人だ。

 これらの状況を踏まえて、音楽ビジネスの生態系を作り直す必要がある。新人開発は日本型クラウドファンディングの普及が鍵だろうし、ファンクラブもソシャゲーの様なオープン型に移行するべきだろう。この辺の処方箋は、拙著『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック刊)にまとめているので興味のある人は読んでみて下さい。
 僕が育った音楽業界には素晴らしいところがたくさんある。パーツとして見れば今でも有益だ。イマドキの言い方で言うと、モジュールとして捉えて、的確に再構築すれば、音楽ビジネスの生態系は息を吹き返すと思う。オールドとニューの融合が肝要だと僕は思っている。

 2021年の大変革に向けて、やるべきことは山積だけれど、まだ4年あるので、しっかり備えていきたい。そんな元旦の抱負にしたい。

 2014年から始めた「ニューミドルマンラボ」は、旬のゲスト講師と共に考える「養成講座」とサロン&ゼミ的に個々の目標を達成するためのフォローアップをする「インキュベーションプログラム」の二軸で続けて、成果が出始めている。今年も継続していくので、コンテンツビジネスについて学びたい人や、起業および転就職を考えている人は、受講を検討して下さい。
 まもなく情報解禁のイベントをフライングで告知しておく。『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)著者でお額ライターの柴那典さん、宇多田ヒカルのヒットで大活躍した宣伝プロデューサーの梶望さん、ALL DIGITAL MUSICでお馴染みの音楽ブロガージェイコウガミさんの3人を招いて、座談会をやります。日程は4月1日の午後帯。ニューミドルマン養成講座第6期のプレイベントしてやるのだけれど、この3人には、第6期のゲスト講師もお願いする予定。詳細は、東京コンテンツプロデューサーズラボのサイトを見て下さい。まもなく情報解禁のはず。


 それから、「テクノロジーで音楽を拡張する」をテーマに始めた、ライブイベント&メディア「TECHS」を今年は強化していきたい。ライブイベントのためにハッカソンを開催するなんて、これまで無かった試みと思う。プログラマー、デザイナー、映像クリエイターなどと同じ目線で、一緒に新しい音楽シーンを作っていきたい。
 TECHS2@六本木SuperDeluxeは214日に行いますでの、ぜひぜひご来場下さい。

 おまけとして、過去の元旦ブログはこちら。同じこと言ってるなとか、日本の動きはおせーなとか思いながら、読んでみて欲しい。





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2016年9月14日水曜日

輝けダイヤの原石!新人発掘プロジェクト始めます。

  無名の新人アーティストを発掘して、サポートする新プロジェクトを始めます!

追記:デモテープを公開品評するラフダイアモンドミートアップの詳細はこちらです!

 音楽事務所はアーティストを見つけて、育てるのは本業中の本業なので、ずっとやってきたことだけれど、レコード会社を中心とした日本の音楽業界の生態系が壊れてしまって、ここ数年は新人開発よりも以前にやることがあるような気がしていた。だから、一流音楽家とプログラマーでミュジシャンズハッカソンを始めたし、エンタメ系スタートアップを支援するアワードや、次世代の音楽家やプロデューサーを育成するセミナーとフォローの仕組み(山口ゼミ〜CoWritingFarm、ニューミドルマンラボ)、インターネットラジオRakutenFMでの「Tokyo Tech Street」の企画監修、など新分野に注力してきた。
 最近、名乗り始めた「エンターテック・エバンジェリスト」的な活動だ。

 でも、僕の本籍は音楽ビジネスで、肩書も音楽プロデューサーがアイデンティティだ。音楽の分野で新しいスターが生まれることに関わりたいという気持ちは変わらず持っていた。
 旧知の人に会うと「いろんなことやっていますね?」と言われることが増えた。褒められているのか、揶揄なのかわからないけれど、確かにいろいろやっているなという実感もある。でも、セミナー主宰もモデレーターも番組企画も企業のアドバイザー業も僕の活動のベクトルは「日本の音楽ビジネスの生態系を再構築する」という動機から始まっていて、同じ問題意識で取り組んでいるので、全て繋がるなという実感がある。
 そして、この活動を行うときのマインド、スキルは、全て、「アーティストマネージメント」をやってきた方法論で取り組んでいる。例えば、拙著『世界を変える80年代生まれの起業家』(SPACESHOWER BOOKS)の出版したり、START ME UP AWARDSのオーガナイザーをやってりし、たくさんの若い起業家と付き合っているけれど、コミュニケーションをするときは、新人アーティストに対するマネージャーのやり方が有効だった。

 ちょっとだけ毒を吐くと、ほとんどのアーティストは何かが上手くいかないと、スタッフのせいにするけれど、起業家は自己責任で生きていて、他人のせいには絶対しないので気持ち良い。
 日本の音楽業界は、音楽を創るアーティストは、売れる前からちゃんとリスペクトして付き合うという素晴らしい伝統があって、僕もその系譜の上で仕事してきているつもりなのだけれど、時にアーティストを甘やかし、スポイルする側面がある。アーティストにビジネス面でも自己責任を持たせて、イコールパートナーになるというやり方に切替えたいと、自分に対して思っている。
 日本人音楽家でセルフマネージメントを立派にやっている方はたくさんいらっしゃるけれど、みなさん「売れた後に自分でやる」というパターンだ。売れる前からビジネス面を自分でリスクを取ってマネージメントしてサクセスした音楽家は、僕の知る限り日本には一人も居ない。そう見えていても、実は裏に敏腕マーネジャーが必ずいる。それが学生時代の同級生で未経験な素人の場合もあったりするのが、このビジネスの面白さなんだけれど、いずれにしても、金銭面に関してはシビアな場面に直面せずにやっている場合がほとんどだ。世の中には、音楽家が事務所やレコード会社に搾取されているという偏見を持っている人も少なくないけれど、初期リスクを取ってもらって、道筋もつくってもらえるのだから、もし一定の期間、「搾取」されたとしても当然というのがビジネス的な感覚だろう。

 でも、そんな状況がそろそろ変わる時代かなと思っている。SNSの普及でコミュニケーションコストは著しく下がった。マスメディアに頼らずとも自分の作品を広げる方法がたくさんある。レコーディングのコストを下げることも可能になった。(あまりにも安直で安価なレコーディングが横行していることには不安を覚えていて、レコーディング・エンジニアの価値を再確認する運動もしたいと思っていけれどね。)Tunecoreを使えば、世界中の配信サービスに簡単に楽曲を流通させることができる。まだまだ日本では弱いけれど、資金集めにはクラウドファンディングも広まり始めている。レコード会社に頼らなくてもできることがほとんどだ。
 一方で、変わらないこともある。経験と人的ネットワークだ。創作上の課題をクリアーする方法は経験が役に立つ。エンタメビジネスは属人性が高い分野だから、相談できる相手がどれだけいるかは財産だ。著作権関係の知見も必要だし、明文化されてないことが多い業界慣習も知っておけば、地雷を踏むことがない。そんな分野では僕らが役に立てると思っている。

 今回のプロジェクトのキッカケは、年末の加茂啓太郎さんのFB投稿。ユニバーサルミュージックを辞めて、フリーランスになるとのこと。すぐに連絡をとって「一緒に新人開発プロジェクトをやりませんか?」と声がけした。加茂さんは、東芝EMI時代に「グレートハンティング」という新人開発部門を始めた、業界では知らない人はいない、掛け値無しに日本一の新人開発A&Rマンだ。ウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、相対性理論、赤い公園などなどなど数々の才能あるアーティストを発掘、売り出してきている。ただ、これまで新人開発は、大手レコード会社のコストセンターだった。
「その考え方はもう古いし、無理じゃないですか?新人開発の仕組み自体を可視化して、ユーザーと一緒に育成していく新しい仕組みをつくって、それ自体をビジネスにしましょうよ!」
クレバーな加茂さんは、僕の意図はすぐ理解してくれて、乗ってくれた。そして流石だなと思ったのは「山口さんの言っていることは2年早いね」と看破されたことだ。だいたい僕が音楽業界で仕掛けたことは、2〜3年早いことが多い。ARの旗手だったセカイカメラとコラボして、自分がプロデュースするアーティストのキャンペーン(セカイカメラ × Sweet Vacationコラボレーションイベント「渋谷で恋するメッセージ〜AR恋文横丁〜」)を仕掛けたのは、2010年2月だから、PokemonGoARが一般化したと考えると6年早かったことになる(*_*)
 素晴らしいミュージックラバーで、抜群の目利き力を持つ加茂さんと組んで、僕のIT関係の知見、ノウハウ、人的ネットワークを注入して、無名の新人がスターダムを上っていく手伝いをしたいし、それが可能になるシステムを作っていきたい。
 やることが早過ぎるということは、功を焦らなければ、ゆっくり準備できるということのはずだ。僕もオトナになる年齢なので(遅すぎ!)今回は、2年位かけて新しいアーティスト育成のモデルを作ろうと思っている。

 募集ページのコメントには、「他力本願でも、タナボタ期待でも無い、才能とガッツのあるインディペンデントアーティストの応募を待っています。」と記した。
 まずはCreofugaのウエブサイトの楽曲を投稿してもらって、ユーザー投票が一次審査、tweet数などの上位を「ラフ・ダイアモンドMeet Up」と称する、公開デモテープ品評会で直接、僕らがアドバイスする。第1回は10/21(金)に渋谷LOFTに決まって、ゲストコメンテーターで元pillowsの上田健司さんが出てくれる。誰でも観られるトークイベントなので、興味のある人は、覗きにきて欲しい。
 そもそも、この「ラフ・ダイアモンド」は、好きなアーティストを見つけて、応援する人を「ダイアモンド・ディガー」と呼んで、ネットワークしていきたいと思っている。アーティスト育成プロセスを可視化するというのは、ユーザー参加型のオープンな仕組みにするということだ、加茂啓太郎フォロワー、ミニ啓太郎も輩出したいと思っている。

 
 音楽ビジネスに興味のある人は、来月から始める。ニューミドルマン養成講座も来て欲しい。今回も素晴らしいゲスト講師の方をお呼びすることができた。「テクノロジーでエンタメを拡張する」という僕のテーマに大きな示唆をもらえる方々なので、ホストの僕が楽しみにしている。

2016年6月30日木曜日

イギリスのEU離脱は、日本人にとっても他人事じゃないよね

 イギリスの国民投票で、EU離脱が選ばれた。様々な視点で語られている話だけれど、僕なりの私見をまとめておきたい。日本人の悪癖として、ポンド預金とかしてないかぎり、自分とは関係ない事的なスタンスの言説が多い気がする。
 僕自身は、めちゃめちゃ身につまされている。

1)ベルリンの壁崩壊以来の世界史的な大事件でしょ?

 普通に生きていると気づかないけれど、僕らは歴史の上に生きている。もう少しリアルに言うと、僕らが生きている時代も、人類が滅亡しない限り、歴史の教科書に掲載される(かもしれない)くらい、今回のイギリスの国民投票結果は、事件だ。

 間違いなくキャメロン首相は、否決できると思っていただろうし、世界中の人、そしてイギリス人もそうだったろう。冷静に論理的に考えれば、EU離脱はマイナスの方が大きい。
 そもそも、議院内閣制の元祖であるイギリスで、国家の重要な決定事項を国民投票にするって、構造矛盾だ。実際、法的根拠がないから従う必要が無いみたいな議論もあるようだ。民意が反映される仕組みのない中国で行われたなら画期的だけれど、イギリスでやるって意味不明だなとそもそも個人的には思っていた。
 その理由や結果の細かな分析は、僕の専門分野ではないので、ここでは触れないけれど、国の大事な決定事項を国民投票に委ねるのは、時代遅れだなと思う。どうしてもやりたいなら、ネット投票にして、95%以上の投票率を担保するべきだろう。
 キャメロン首相の「ええかっこしー」が、イギリスを不幸にしたのかもしれない。リーマン・ショックとの比較をしているのは矮小化で、経済問題と捉えるべきじゃないよね。

2)EU対イギリスをアジア対日本のアナロジーで見ようよ。

 僕が気になったのは、精緻な分析をしているように見えたブログのまとめが「日本人でよかったな」みたいなことになっていたこと。 
 「日本とは無関係なこと」みたいな根拠の無い言説が広まっているようだ。僕は、日本の危機(とそれの裏腹の可能性やチャンス)を重ねあわせるべき事件に感じている。違いを際立たせて理解するのではなく、島国という共通点もあるイギリスと日本の相似点を浮き彫りにした方がためになる。
 大英帝国を展開し、世界的に超勝ち組だったイギリスが、one of 大国になり、EUの加盟国になりながら、自国通貨ポンドだけを維持しているのは、微妙なバランス感覚だと僕は思っていた。それをイギリス国民が否定したのが今回の結果だ。例えばだけど、5年後に中国かシンガポールがアジアの覇権国、今のヨーロッパにおけるドイツみたいな存在になり、ASEANを巻き込んだ経済圏をつくろうとなった時に、日本はどうするべきなのだろう?僕は、そういう動きのイニシアティブを積極的に前倒しで日本がとるべきという意見を持っているけれど、そうじゃないにしても、今回のイギリスのEU離脱は、そんなイメージのリアリティの中でとらえるべきだと思っている。
 本当にイギリスがEU離脱したら、スコットランドはEU加盟に動くだろう。そのことを沖縄の基地問題と重ねあわせて見ることができないとしたら目が濁っている。沖縄県議会が日本離脱、アジア連合加盟となるというのは容易に想像できる。

 3)エンターテインメント、インバウンドが日本の生きる道だよね。

 人口が減り始めていて、少子高齢化が進む日本は、製造業では戦えない。「ものづくり日本」みたいなキャッチフレーズは反対ではないけれど、グローバル市場で、日本的な感覚を「ユーザーオリエンテッドな製造」と読み替える必要はある。従来型の大企業と、下請けの仕組みを守ることに意味があるのではなく、本質的な日本の強さを守ることが大切なのだと思う。
 ざっくり言うと、消費者のわがままレベルが高いことと、それに丁寧に対応できるノウハウが日本の強みなのだろう。空気を読む(=気遣いができる)日本人が観光業に活路を見出すということが国民的コンセンサスになれば良いよね。そして、日本的な価値観をわかりやすく伝えられるのがエンタメ業界だというのが僕の認識で、背筋を伸ばして頑張らなければいけないと思っている。

 個人的な話をさせてもらえば、日本はピンチという危機感でSTARE ME UP AWARDSをやっているつもり。自分のアイデアで世の中変えたいと思っている若者は是非、エントリーして欲しい。危機感を共有する意識の高い「大人」たちが関わっているプロジェクトだから。
 同時に、日本人音楽家のクリエイティビティを信じて、チームに第一線の音楽家が加わるというミュージシャンズハッカソンも始めた。グローバル市場を意識せざるを得ない時代に、日本人がどう生き残っていき、国際競争で勝っていけるのか、真剣に考えたい。
 音楽プロデューサーである自分が、そんな思いになる時代だし状況なんだなと、イギリスの国民投票は教えてくれた。気持ちが重くなる事件だけれど、個人的には感謝したいと思う。

2016年4月25日月曜日

みんな誤解しないでね。SXSWの本質は勉強会だよ。〜それでもSXSWが発展を続ける理由

 SXSWに初めて行ったのは13年前だったと思う。オースティンは本当に田舎町でステーキとアメリカンフードしかなかったし、今やおしゃれ&グルメスポットになっているイーストエリアは危ないから行くなと言われていた。メインは音楽祭で、映画祭もやっている
JAPAN HOUSE外観
んだねという感じだった。インタラクティブ部門もあるにはあったけれど、存在感はほとんど無かった。その頃から、トークセッションはたくさん行われていた。
1986年に始めたのは地元のマネージャー(とローカルメディア編集者)で、自分のアーティストを音楽業界に売り込むためのカンファレンスとショーケースライブという内容だったらしい。そもそも南南西(South By South West)というネーミングは、映画「北北西に進路を取れ」に因んで、当時音楽業界の中心だったNYから見て南南西に位置するから付けられたらしい。

 大きく変わったのは2007年に始まったばかりのTwitterが、SXSWをきっかけいに世界的なブレイクをしてからだ。狭いエリアにリテラシーの高い人たちが集まっていたから、Twitterの即時性と爆発的な情報伝達力が活きたのだろう。以来、ITサービス事業者
トレードショーから
は、SXSWを意識して新サービスを発表するようになっていった。投資家と起業家が相乗効果で集まるようになり、ITサービスとスタートアップのイベントの様相を呈していった。
 ところが日本のIT業界からは全くノーマークで、JAPAN REPの麻田浩さんたちから相談されて、当時、セカイカメラで注目を集めていた井口尊仁さんを推薦した。「SAMURAI1000」というキャッチフレーズで、日本人スタートアップにSXSWの存在が広まっていった。
 この数年、日本からの参加者は急増した。今年はトレードショーに日本のスタートアップが普通にブースを出すようになっていて、良いことだなと思う。あのトテツモナイ情報量とエネルギッシュな場で自分たちのサービスをアピールする経験は貴重だろう。

 ただ、有名になったことでSXSWに過大な期待をしたり、勘違いしている人も出てきてるような気がする。「CES(全米家電見本市)のブースの方が活気があった」と発言している人が居て驚いた。SXSWはトレードショーイベントではない。カンファレンスとネッ
音楽×テック感あるヘッドフォン
トワーキングが核心だ。世界中から旬な人が集まって、近未来のテーマについて意見交換をする、そこに集まる人達がつながっていくところに本質的な価値がある。REP麻田浩さんの言葉を借りれば、「SXSWは勉強会」なのだ。

 音楽から始まって、映画、ITサービスと守備範囲を広げたSXSWの近年のホットなテーマは、ロボット工学、人工知能、医療技術(Med-Tech)VR/AR(仮想現実/拡張現実)だ。社会の課題を解決させ、世界を発展させるイノベーションに関する「これからのテーマ」が話し合われている。ドローンの話は一昨年くらいに一旦「済んだ」印象。ストリーミングサービスの是非や効用にについて話していたのは6年位前だから、今頃「ストリーミングサービスが根づくか?」みたいな話をしている日本はいくらなんでも世界の潮流に遅れ過ぎだね()

 デジタル技術の圧倒的な進化で起きる様々な軋轢や課題について一番最初に、深く広く、そして自由に話をされる場になっている。テキサスは独立国だったこともあってアメリカの中での反骨気質がある。アンチ・ハリウッド、アンチ・ワシントン、アンチ・シリ
テキサス州の形の看板
コンバレーという空気が自由な議論をするのに適しているのだろう。

 僕も自分がプロデュースするアーティストを連れて行ったり、SXSWにはずっと関わってきた。2012年からはトレードショーの中でJAPAN PAVILIONをつくり、昨年からは街中にも拠点を持つJAPAN HOUSEを始めた。他国が積極的にやっているのに日本だけ置いてきぼりなのが悔しいと思って、大声での言い出しっぺ的役をやっただけで、プロデューサーといえるほどの仕事はできてないけれど、今年のJAPAN HOUSEは意義深かったと自負している。

 日本ではマツコロイドのTV番組とTVCMで一般的に知られている石黒浩大阪大学教授は、ロボット工学の分野で世界的に評価されている研究者。神戸大学の杉本医師も最先端
技術の外科医療への導入の先駆者の1人だ。この二人をSXSWが主宰する公式セッションで登壇できるように後押しをした。特に石黒先生は1700本あるセッションの内の選りすぐりのTOP50、「フィーチャードセッション」に選ばれ、アンドロイドと人間の英語での雑
石黒ロイドと話すアメリカ人
談実験などをステージ上で行い、最後はスタンディングオベーションだった。アメリカで一番部数が多い大衆新聞USATodayのトップページを飾るという大きなオマケも付いた。

 JAPAN HOUSEはオースティン最大の繁華街6番街のライブハウスを2日間借り切って、これらの公式セッションの受け皿として、フォローアップのトークイベント、関連するブース展示、ミートアップイベントなどを行った。2日間で4000人以上の来場者。他にも、NEDOが推薦する技術系スタートアップのピッチイベントや、NTT研究所の技術を取り入れたYun*chiのライブ・ショーなど充実した内容で、JAPANの技術やコンテンツへの興味を喚起することができたと思う。インタラクティブ部門のディレクターHugh Forrestにも登壇してもらったが、彼もJAPAN HOUSEを高く評価してくれていた。運営自体はバタバタで課題がたくさんあったけれど、「勉強会+ネットワーキング」というSXSWを活用するフォーマットとしては、これまでに、日本はもちろん、他国でもやれてない成功モデルを見せることができた。

 先日AOI Pro本社で行った報告会には、120名程の熱心な参加者がメモを取りながら聞いてくれていた。前半はAOIproの研修チームによるSXSW2016総括もあって充実した内容
ホテルからオースティンを望む
だったので、みなさん満足して下さったようだった。
 その時にも申し上げたけれど、日本のテクノロジーとコンテンツの進化のためにSXSWを活用する動きは今後も広げていきたい。

 オースティンがコンテンツ活用の地方創生の、世界一の成功モデルだというのは去年もブログに書いたから、ここでは繰り返さないけれど、不動産価格の上昇率が全米一らしいオースティンの開発はますます進んでいるようだ。SXSW20174つのトレンドの一つは「Smart CityIoT homeと次世代交通」だから、ますます地方創生視点での重要度が高まる。やる気のある自治体をオースティンとつなぐ役割もやっていきたい。ちなみに、残りの3つは「AI&ロボティクスドリブンな未来」「VE/ARの更なる進化」「政治とテクノロジーコミュニティ」だ。

 音楽と映画の祭典から、ITサービスが加わり、近年は世界のイノベーションを牽引するイベントへと進化している。SXSWをウォッチすることは、世界のイノベーションの最先端を知ることに繋がる。

 「SXSWも変質したよね」という声も聞く。まあ成功すると僻みも含めてディスられるのは世の常だし、JAPAN HOUSEを運営すると、近年は「ゼニゲバ」ぶりを感じて、鼻白む気分になる時もあるけれど、SXSWの存在感は落ちるどころか、ますます大きくなっていくだろう。

トヨタiROAD
 そして、一言言っておきたい言いたいのは、SXSWは音楽祭から始まって、今も音楽をリスペクトしたイベントで、期間中はオースティンの街に音楽が溢れていること。そのことがSXSWの魅力を高めていることは間違いない。音楽とテクノロジーの美しい関係がここにはあるんだ。

 僕がエンタメ系スタートアップのアワードとしてのSTART ME UP AWARDSを有志の実行委員会で立ち上げ時も、関連イベントとした神奈川県真鶴町でクリエイターズキャンプ真鶴を始めた時も、頭の片隅ではSXSWを意識しているし、あの空気を吸ってきたから企画できたという思いも強い。
CommUを踊らせる

 SMUA2016のキックオフイベントを5/11にやるので、エンターテインメントとテクノロジーとスタートアップに興味のある人は、是非来て欲しい。

 THE BIG PARADECo-Founder鈴木貴歩さんがユニバーサルミュージックから独立してエンタテック・アクセラレーターを始めた。「エンタテックenter-tech」という言葉を広めようというに賛同して、僕も最近使うようにしている。同じような問題意識でニューミドルマン・ラボもやっている。第4期に集まったメンバー多様で、意識が高くて早速、刺激をもらっている。時代の変革期には、新しいエネルギッシュな人材が必要だ。日本のエンタテックシーンを活性化していきたい。
 
 SXSWTwitterが登場するのに20年かかった。SMUACC真鶴がSXSWのような影響力を持つのには、20年位は必要なのかもしれない。その頃に日本社会は、世界はどうなっているのか?不安もあるけれど、ポジティブ思考で、イノベーションの行末に、きちんと関わっていけるように頑張りたい。