2012年1月1日日曜日

独断的音楽ビジネス予測 〜2012年は目覚ましい変化なし。大変革への準備の年〜

 新年、明けましておめでとうございます。昨年の震災で、日本中が喪中みたいな年だけど、そんな時だけに、新年を迎えた喜びを分かち合いたいと思います。

2011年は、個人的にも、日本にも、国際的にも大きな事件があった年なので、いろいろなことを考えさせられた。年末から経済分析などを読み、考えてきたので、2012年予測を記しておきたい。

マクロ的には世界経済が不安定だ。ユーロは崩壊寸前の危機。ヨーロッパ経済が破綻すれば、中国に波及し、米国、日本への影響が拡大していくという世界恐慌の悪夢。これは、さすがに酷すぎるので、各国の指導者達が何とか避けると信じるしか無い。「人類を何回も殺せるくらいの爆弾があっても、核戦争が起きなかった」的な希望的観測。
いずれにしても、相対的(消去法的?)に、日本の国債と円の価値は上がるので、日本政府の財政は維持され、円高は進んでいく。
今年は世界主要国(米国・ロシア・中国等々)で選挙☞指導者交代があるので、政策的な大きな変化は起きにくい。求心力をもったリーダーが2013年にどのような変革を起こすか、おそれまでは、去年までの傾向が継続して、傷には絆創膏を貼るという感じの対応になるというのが、一般的な予測だと思う。

そんな中で日本の音楽ビジネスについて考えてみた。
ざっくり言うと、今年は、大きな変化は起きないと予測する。近年続いている傾向は続くだろう。CD売上減少、着うたの減少、スマフォ&PC配信の微増などは、環境的に変わりようが無い。ただ、ぞれぞれ緩やかな変化で、根本的な構造変化は今年は起きないと思う。
日本も早く変わるべきだと思っている僕にとっては、不本意な予測だけれど、、。

CD売上は、前年比一割以内の減少に留まる
2011年の統計はまだ出てないけれど、震災があったのに5%程度の減に留まりそう。「ほとんどAKB48でしょ?」「同じ人が何枚も買っているんでしょ?」という声が聞こえそうだけど、本質的じゃ無くても、理由はともあれ売上が維持されれば、ビジネススキームは温存されるという道理。

モバイル配信の変化もゆっくり進む
スマートフォンへの買い換えは進んでいくだろうから、「着うた」「着うたフル」は急激に落ちていく。ただ、去年下半期を傾向を見ていると、スマフォになっても、レコチョクやMORAで音楽を買うという習慣はある程度、残りそう。350円〜400円だった着うたフルに対して、スマフォだと1曲200円になるから、売上減は避けられないだろうけれど、DL数はそれほど落ちない気がする。

ストリーミングサービスは本格始動しない
音楽関連の画期的なITサービスの進出は望み薄だ。
レコードビジネスは、クラウド型ストリーミング(聞き放題)サービスがメインになり、CDはアーティストとの関係性を示す記念品として残り、ダウンロードサービスは衰退する、というのが僕の基本的な認識だ。実際、ヨーロッパでは始まっている。音楽ファイルになってしまった音楽は、違法配信サイトやピアトゥーピアサービスを撲滅することが原理的に不可能な以上、ユーザーに快適な音楽再生環境を提供して、音楽制作費を回収する仕組みを確立するしか無い。
でも、残念ながら、今年は日本ではまだ始まらないだろう。
アップル社も、ダウンロード型のiTunesStoreが世界(日本を除く)のデファクトになったためか聞き放題型に切り替えることができずにいる。本命もと言うべき、Spotifyは、米国でのサービスを始めたばかりで、日本上陸は、今年は無理そうだ。
権利ホルダーの中心であるレコード会社が日本の通信会社と組んで始めるべきだと思うけれど、前述の通り、前年比9割程度が維持されれば、守りに入って、攻めに出ることは難しいだろうね(auはLISMOで聞き放題サービスを始めているけれど、聴けるのはほとんど洋楽)
ベンチャーもIT大手も含めて、主役となれる可能性のある事業者が全く見えない。今年は間に合わないと思う。

●つまり、音楽ユーザーの消費行動はまだ大きく動かないということ
ちなみに2011年のCDレンタルの売上は前年比97%程度と言われている。震災のマイナス分を考えると、むしろ微増と言えるかも知れない。TSUTAYAがポスト返却など利便性を高めたり、ゲオが映画DVDの50円レンタル(市場を壊す行為なので大至急やめさせるべきと思うけど)で集客したりして、レンタル市場は維持されている。ユーザーは、CDを借りて聴く、PCにリッピングしてiPodで聴くという消費行動は、定着していてすぐには変わりそうもない。
新しい事をすぐ試してみるいわゆるイノベーター層はともかく、音楽ユーザーのマジョリティ(多数派)は、自分でイメージできて、安心できるサービスしか取り入れない。

日本が足踏みしている間に、欧米ではサービスが進化する。焦る気持ちもあるけれど、視点を変えれば、欧米のサービス状況を吟味して、日本流サービスを考える時間があるとも言える。この時間差を無駄にしないで、しっかり準備したい。
日本市場は、定着し始めると早いという特徴もある。2013年か14年か、一気に、ストリーミングサービスが広がる可能性は高いと僕は思っている。

そんな2012年は、音楽ビジネスは「準備の年」になる。ポイントは3つ。
1)経済的中間層が激増するアジアを中心とした海外輸出の環境整備
2)ソーシャルメディアを活用したプロモーションおよびマネタイズの研究
3)異業種との組み合わせ、企業とユーザーのリレーションに貢献する仕組みの確立

自分自身、昨年からキャッチフレーズにしている、グローバルな視点ソーシャルメディア活用異業種コラボをテーマに、準備を進めておきたいと思う。

付け加えると、ライブエンターテインメントは引き続き堅調、ファンクラブ、グッズなどを加えたアーティストビジネスは、ビックアーティストを中心に微増していくという流れは暫く変わらないだろうね。

年間予測は、高名な評論家も外してばかりだ。僕の予測は、当たるも八卦、当たらぬも八卦、正月のおみくじみたいなものと笑って赦して欲しい。
今年の年末にこのブログを読み返して、自分がどんな感想を持つのか、そんな事を楽しみに、一年間頑張ろう。

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