2016年6月30日木曜日

イギリスのEU離脱は、日本人にとっても他人事じゃないよね

 イギリスの国民投票で、EU離脱が選ばれた。様々な視点で語られている話だけれど、僕なりの私見をまとめておきたい。日本人の悪癖として、ポンド預金とかしてないかぎり、自分とは関係ない事的なスタンスの言説が多い気がする。
 僕自身は、めちゃめちゃ身につまされている。

1)ベルリンの壁崩壊以来の世界史的な大事件でしょ?

 普通に生きていると気づかないけれど、僕らは歴史の上に生きている。もう少しリアルに言うと、僕らが生きている時代も、人類が滅亡しない限り、歴史の教科書に掲載される(かもしれない)くらい、今回のイギリスの国民投票結果は、事件だ。

 間違いなくキャメロン首相は、否決できると思っていただろうし、世界中の人、そしてイギリス人もそうだったろう。冷静に論理的に考えれば、EU離脱はマイナスの方が大きい。
 そもそも、議院内閣制の元祖であるイギリスで、国家の重要な決定事項を国民投票にするって、構造矛盾だ。実際、法的根拠がないから従う必要が無いみたいな議論もあるようだ。民意が反映される仕組みのない中国で行われたなら画期的だけれど、イギリスでやるって意味不明だなとそもそも個人的には思っていた。
 その理由や結果の細かな分析は、僕の専門分野ではないので、ここでは触れないけれど、国の大事な決定事項を国民投票に委ねるのは、時代遅れだなと思う。どうしてもやりたいなら、ネット投票にして、95%以上の投票率を担保するべきだろう。
 キャメロン首相の「ええかっこしー」が、イギリスを不幸にしたのかもしれない。リーマン・ショックとの比較をしているのは矮小化で、経済問題と捉えるべきじゃないよね。

2)EU対イギリスをアジア対日本のアナロジーで見ようよ。

 僕が気になったのは、精緻な分析をしているように見えたブログのまとめが「日本人でよかったな」みたいなことになっていたこと。 
 「日本とは無関係なこと」みたいな根拠の無い言説が広まっているようだ。僕は、日本の危機(とそれの裏腹の可能性やチャンス)を重ねあわせるべき事件に感じている。違いを際立たせて理解するのではなく、島国という共通点もあるイギリスと日本の相似点を浮き彫りにした方がためになる。
 大英帝国を展開し、世界的に超勝ち組だったイギリスが、one of 大国になり、EUの加盟国になりながら、自国通貨ポンドだけを維持しているのは、微妙なバランス感覚だと僕は思っていた。それをイギリス国民が否定したのが今回の結果だ。例えばだけど、5年後に中国かシンガポールがアジアの覇権国、今のヨーロッパにおけるドイツみたいな存在になり、ASEANを巻き込んだ経済圏をつくろうとなった時に、日本はどうするべきなのだろう?僕は、そういう動きのイニシアティブを積極的に前倒しで日本がとるべきという意見を持っているけれど、そうじゃないにしても、今回のイギリスのEU離脱は、そんなイメージのリアリティの中でとらえるべきだと思っている。
 本当にイギリスがEU離脱したら、スコットランドはEU加盟に動くだろう。そのことを沖縄の基地問題と重ねあわせて見ることができないとしたら目が濁っている。沖縄県議会が日本離脱、アジア連合加盟となるというのは容易に想像できる。

 3)エンターテインメント、インバウンドが日本の生きる道だよね。

 人口が減り始めていて、少子高齢化が進む日本は、製造業では戦えない。「ものづくり日本」みたいなキャッチフレーズは反対ではないけれど、グローバル市場で、日本的な感覚を「ユーザーオリエンテッドな製造」と読み替える必要はある。従来型の大企業と、下請けの仕組みを守ることに意味があるのではなく、本質的な日本の強さを守ることが大切なのだと思う。
 ざっくり言うと、消費者のわがままレベルが高いことと、それに丁寧に対応できるノウハウが日本の強みなのだろう。空気を読む(=気遣いができる)日本人が観光業に活路を見出すということが国民的コンセンサスになれば良いよね。そして、日本的な価値観をわかりやすく伝えられるのがエンタメ業界だというのが僕の認識で、背筋を伸ばして頑張らなければいけないと思っている。

 個人的な話をさせてもらえば、日本はピンチという危機感でSTARE ME UP AWARDSをやっているつもり。自分のアイデアで世の中変えたいと思っている若者は是非、エントリーして欲しい。危機感を共有する意識の高い「大人」たちが関わっているプロジェクトだから。
 同時に、日本人音楽家のクリエイティビティを信じて、チームに第一線の音楽家が加わるというミュージシャンズハッカソンも始めた。グローバル市場を意識せざるを得ない時代に、日本人がどう生き残っていき、国際競争で勝っていけるのか、真剣に考えたい。
 音楽プロデューサーである自分が、そんな思いになる時代だし状況なんだなと、イギリスの国民投票は教えてくれた。気持ちが重くなる事件だけれど、個人的には感謝したいと思う。