2016年9月14日水曜日

輝けダイヤの原石!新人発掘プロジェクト始めます。

  無名の新人アーティストを発掘して、サポートする新プロジェクトを始めます!

追記:デモテープを公開品評するラフダイアモンドミートアップの詳細はこちらです!

 音楽事務所はアーティストを見つけて、育てるのは本業中の本業なので、ずっとやってきたことだけれど、レコード会社を中心とした日本の音楽業界の生態系が壊れてしまって、ここ数年は新人開発よりも以前にやることがあるような気がしていた。だから、一流音楽家とプログラマーでミュジシャンズハッカソンを始めたし、エンタメ系スタートアップを支援するアワードや、次世代の音楽家やプロデューサーを育成するセミナーとフォローの仕組み(山口ゼミ〜CoWritingFarm、ニューミドルマンラボ)、インターネットラジオRakutenFMでの「Tokyo Tech Street」の企画監修、など新分野に注力してきた。
 最近、名乗り始めた「エンターテック・エバンジェリスト」的な活動だ。

 でも、僕の本籍は音楽ビジネスで、肩書も音楽プロデューサーがアイデンティティだ。音楽の分野で新しいスターが生まれることに関わりたいという気持ちは変わらず持っていた。
 旧知の人に会うと「いろんなことやっていますね?」と言われることが増えた。褒められているのか、揶揄なのかわからないけれど、確かにいろいろやっているなという実感もある。でも、セミナー主宰もモデレーターも番組企画も企業のアドバイザー業も僕の活動のベクトルは「日本の音楽ビジネスの生態系を再構築する」という動機から始まっていて、同じ問題意識で取り組んでいるので、全て繋がるなという実感がある。
 そして、この活動を行うときのマインド、スキルは、全て、「アーティストマネージメント」をやってきた方法論で取り組んでいる。例えば、拙著『世界を変える80年代生まれの起業家』(SPACESHOWER BOOKS)の出版したり、START ME UP AWARDSのオーガナイザーをやってりし、たくさんの若い起業家と付き合っているけれど、コミュニケーションをするときは、新人アーティストに対するマネージャーのやり方が有効だった。

 ちょっとだけ毒を吐くと、ほとんどのアーティストは何かが上手くいかないと、スタッフのせいにするけれど、起業家は自己責任で生きていて、他人のせいには絶対しないので気持ち良い。
 日本の音楽業界は、音楽を創るアーティストは、売れる前からちゃんとリスペクトして付き合うという素晴らしい伝統があって、僕もその系譜の上で仕事してきているつもりなのだけれど、時にアーティストを甘やかし、スポイルする側面がある。アーティストにビジネス面でも自己責任を持たせて、イコールパートナーになるというやり方に切替えたいと、自分に対して思っている。
 日本人音楽家でセルフマネージメントを立派にやっている方はたくさんいらっしゃるけれど、みなさん「売れた後に自分でやる」というパターンだ。売れる前からビジネス面を自分でリスクを取ってマネージメントしてサクセスした音楽家は、僕の知る限り日本には一人も居ない。そう見えていても、実は裏に敏腕マーネジャーが必ずいる。それが学生時代の同級生で未経験な素人の場合もあったりするのが、このビジネスの面白さなんだけれど、いずれにしても、金銭面に関してはシビアな場面に直面せずにやっている場合がほとんどだ。世の中には、音楽家が事務所やレコード会社に搾取されているという偏見を持っている人も少なくないけれど、初期リスクを取ってもらって、道筋もつくってもらえるのだから、もし一定の期間、「搾取」されたとしても当然というのがビジネス的な感覚だろう。

 でも、そんな状況がそろそろ変わる時代かなと思っている。SNSの普及でコミュニケーションコストは著しく下がった。マスメディアに頼らずとも自分の作品を広げる方法がたくさんある。レコーディングのコストを下げることも可能になった。(あまりにも安直で安価なレコーディングが横行していることには不安を覚えていて、レコーディング・エンジニアの価値を再確認する運動もしたいと思っていけれどね。)Tunecoreを使えば、世界中の配信サービスに簡単に楽曲を流通させることができる。まだまだ日本では弱いけれど、資金集めにはクラウドファンディングも広まり始めている。レコード会社に頼らなくてもできることがほとんどだ。
 一方で、変わらないこともある。経験と人的ネットワークだ。創作上の課題をクリアーする方法は経験が役に立つ。エンタメビジネスは属人性が高い分野だから、相談できる相手がどれだけいるかは財産だ。著作権関係の知見も必要だし、明文化されてないことが多い業界慣習も知っておけば、地雷を踏むことがない。そんな分野では僕らが役に立てると思っている。

 今回のプロジェクトのキッカケは、年末の加茂啓太郎さんのFB投稿。ユニバーサルミュージックを辞めて、フリーランスになるとのこと。すぐに連絡をとって「一緒に新人開発プロジェクトをやりませんか?」と声がけした。加茂さんは、東芝EMI時代に「グレートハンティング」という新人開発部門を始めた、業界では知らない人はいない、掛け値無しに日本一の新人開発A&Rマンだ。ウルフルズ、氣志團、ナンバーガール、相対性理論、赤い公園などなどなど数々の才能あるアーティストを発掘、売り出してきている。ただ、これまで新人開発は、大手レコード会社のコストセンターだった。
「その考え方はもう古いし、無理じゃないですか?新人開発の仕組み自体を可視化して、ユーザーと一緒に育成していく新しい仕組みをつくって、それ自体をビジネスにしましょうよ!」
クレバーな加茂さんは、僕の意図はすぐ理解してくれて、乗ってくれた。そして流石だなと思ったのは「山口さんの言っていることは2年早いね」と看破されたことだ。だいたい僕が音楽業界で仕掛けたことは、2〜3年早いことが多い。ARの旗手だったセカイカメラとコラボして、自分がプロデュースするアーティストのキャンペーン(セカイカメラ × Sweet Vacationコラボレーションイベント「渋谷で恋するメッセージ〜AR恋文横丁〜」)を仕掛けたのは、2010年2月だから、PokemonGoARが一般化したと考えると6年早かったことになる(*_*)
 素晴らしいミュージックラバーで、抜群の目利き力を持つ加茂さんと組んで、僕のIT関係の知見、ノウハウ、人的ネットワークを注入して、無名の新人がスターダムを上っていく手伝いをしたいし、それが可能になるシステムを作っていきたい。
 やることが早過ぎるということは、功を焦らなければ、ゆっくり準備できるということのはずだ。僕もオトナになる年齢なので(遅すぎ!)今回は、2年位かけて新しいアーティスト育成のモデルを作ろうと思っている。

 募集ページのコメントには、「他力本願でも、タナボタ期待でも無い、才能とガッツのあるインディペンデントアーティストの応募を待っています。」と記した。
 まずはCreofugaのウエブサイトの楽曲を投稿してもらって、ユーザー投票が一次審査、tweet数などの上位を「ラフ・ダイアモンドMeet Up」と称する、公開デモテープ品評会で直接、僕らがアドバイスする。第1回は10/21(金)に渋谷LOFTに決まって、ゲストコメンテーターで元pillowsの上田健司さんが出てくれる。誰でも観られるトークイベントなので、興味のある人は、覗きにきて欲しい。
 そもそも、この「ラフ・ダイアモンド」は、好きなアーティストを見つけて、応援する人を「ダイアモンド・ディガー」と呼んで、ネットワークしていきたいと思っている。アーティスト育成プロセスを可視化するというのは、ユーザー参加型のオープンな仕組みにするということだ、加茂啓太郎フォロワー、ミニ啓太郎も輩出したいと思っている。

 
 音楽ビジネスに興味のある人は、来月から始める。ニューミドルマン養成講座も来て欲しい。今回も素晴らしいゲスト講師の方をお呼びすることができた。「テクノロジーでエンタメを拡張する」という僕のテーマに大きな示唆をもらえる方々なので、ホストの僕が楽しみにしている。

2016年6月30日木曜日

イギリスのEU離脱は、日本人にとっても他人事じゃないよね

 イギリスの国民投票で、EU離脱が選ばれた。様々な視点で語られている話だけれど、僕なりの私見をまとめておきたい。日本人の悪癖として、ポンド預金とかしてないかぎり、自分とは関係ない事的なスタンスの言説が多い気がする。
 僕自身は、めちゃめちゃ身につまされている。

1)ベルリンの壁崩壊以来の世界史的な大事件でしょ?

 普通に生きていると気づかないけれど、僕らは歴史の上に生きている。もう少しリアルに言うと、僕らが生きている時代も、人類が滅亡しない限り、歴史の教科書に掲載される(かもしれない)くらい、今回のイギリスの国民投票結果は、事件だ。

 間違いなくキャメロン首相は、否決できると思っていただろうし、世界中の人、そしてイギリス人もそうだったろう。冷静に論理的に考えれば、EU離脱はマイナスの方が大きい。
 そもそも、議院内閣制の元祖であるイギリスで、国家の重要な決定事項を国民投票にするって、構造矛盾だ。実際、法的根拠がないから従う必要が無いみたいな議論もあるようだ。民意が反映される仕組みのない中国で行われたなら画期的だけれど、イギリスでやるって意味不明だなとそもそも個人的には思っていた。
 その理由や結果の細かな分析は、僕の専門分野ではないので、ここでは触れないけれど、国の大事な決定事項を国民投票に委ねるのは、時代遅れだなと思う。どうしてもやりたいなら、ネット投票にして、95%以上の投票率を担保するべきだろう。
 キャメロン首相の「ええかっこしー」が、イギリスを不幸にしたのかもしれない。リーマン・ショックとの比較をしているのは矮小化で、経済問題と捉えるべきじゃないよね。

2)EU対イギリスをアジア対日本のアナロジーで見ようよ。

 僕が気になったのは、精緻な分析をしているように見えたブログのまとめが「日本人でよかったな」みたいなことになっていたこと。 
 「日本とは無関係なこと」みたいな根拠の無い言説が広まっているようだ。僕は、日本の危機(とそれの裏腹の可能性やチャンス)を重ねあわせるべき事件に感じている。違いを際立たせて理解するのではなく、島国という共通点もあるイギリスと日本の相似点を浮き彫りにした方がためになる。
 大英帝国を展開し、世界的に超勝ち組だったイギリスが、one of 大国になり、EUの加盟国になりながら、自国通貨ポンドだけを維持しているのは、微妙なバランス感覚だと僕は思っていた。それをイギリス国民が否定したのが今回の結果だ。例えばだけど、5年後に中国かシンガポールがアジアの覇権国、今のヨーロッパにおけるドイツみたいな存在になり、ASEANを巻き込んだ経済圏をつくろうとなった時に、日本はどうするべきなのだろう?僕は、そういう動きのイニシアティブを積極的に前倒しで日本がとるべきという意見を持っているけれど、そうじゃないにしても、今回のイギリスのEU離脱は、そんなイメージのリアリティの中でとらえるべきだと思っている。
 本当にイギリスがEU離脱したら、スコットランドはEU加盟に動くだろう。そのことを沖縄の基地問題と重ねあわせて見ることができないとしたら目が濁っている。沖縄県議会が日本離脱、アジア連合加盟となるというのは容易に想像できる。

 3)エンターテインメント、インバウンドが日本の生きる道だよね。

 人口が減り始めていて、少子高齢化が進む日本は、製造業では戦えない。「ものづくり日本」みたいなキャッチフレーズは反対ではないけれど、グローバル市場で、日本的な感覚を「ユーザーオリエンテッドな製造」と読み替える必要はある。従来型の大企業と、下請けの仕組みを守ることに意味があるのではなく、本質的な日本の強さを守ることが大切なのだと思う。
 ざっくり言うと、消費者のわがままレベルが高いことと、それに丁寧に対応できるノウハウが日本の強みなのだろう。空気を読む(=気遣いができる)日本人が観光業に活路を見出すということが国民的コンセンサスになれば良いよね。そして、日本的な価値観をわかりやすく伝えられるのがエンタメ業界だというのが僕の認識で、背筋を伸ばして頑張らなければいけないと思っている。

 個人的な話をさせてもらえば、日本はピンチという危機感でSTARE ME UP AWARDSをやっているつもり。自分のアイデアで世の中変えたいと思っている若者は是非、エントリーして欲しい。危機感を共有する意識の高い「大人」たちが関わっているプロジェクトだから。
 同時に、日本人音楽家のクリエイティビティを信じて、チームに第一線の音楽家が加わるというミュージシャンズハッカソンも始めた。グローバル市場を意識せざるを得ない時代に、日本人がどう生き残っていき、国際競争で勝っていけるのか、真剣に考えたい。
 音楽プロデューサーである自分が、そんな思いになる時代だし状況なんだなと、イギリスの国民投票は教えてくれた。気持ちが重くなる事件だけれど、個人的には感謝したいと思う。

2016年4月25日月曜日

みんな誤解しないでね。SXSWの本質は勉強会だよ。〜それでもSXSWが発展を続ける理由

 SXSWに初めて行ったのは13年前だったと思う。オースティンは本当に田舎町でステーキとアメリカンフードしかなかったし、今やおしゃれ&グルメスポットになっているイーストエリアは危ないから行くなと言われていた。メインは音楽祭で、映画祭もやっている
JAPAN HOUSE外観
んだねという感じだった。インタラクティブ部門もあるにはあったけれど、存在感はほとんど無かった。その頃から、トークセッションはたくさん行われていた。
1986年に始めたのは地元のマネージャー(とローカルメディア編集者)で、自分のアーティストを音楽業界に売り込むためのカンファレンスとショーケースライブという内容だったらしい。そもそも南南西(South By South West)というネーミングは、映画「北北西に進路を取れ」に因んで、当時音楽業界の中心だったNYから見て南南西に位置するから付けられたらしい。

 大きく変わったのは2007年に始まったばかりのTwitterが、SXSWをきっかけいに世界的なブレイクをしてからだ。狭いエリアにリテラシーの高い人たちが集まっていたから、Twitterの即時性と爆発的な情報伝達力が活きたのだろう。以来、ITサービス事業者
トレードショーから
は、SXSWを意識して新サービスを発表するようになっていった。投資家と起業家が相乗効果で集まるようになり、ITサービスとスタートアップのイベントの様相を呈していった。
 ところが日本のIT業界からは全くノーマークで、JAPAN REPの麻田浩さんたちから相談されて、当時、セカイカメラで注目を集めていた井口尊仁さんを推薦した。「SAMURAI1000」というキャッチフレーズで、日本人スタートアップにSXSWの存在が広まっていった。
 この数年、日本からの参加者は急増した。今年はトレードショーに日本のスタートアップが普通にブースを出すようになっていて、良いことだなと思う。あのトテツモナイ情報量とエネルギッシュな場で自分たちのサービスをアピールする経験は貴重だろう。

 ただ、有名になったことでSXSWに過大な期待をしたり、勘違いしている人も出てきてるような気がする。「CES(全米家電見本市)のブースの方が活気があった」と発言している人が居て驚いた。SXSWはトレードショーイベントではない。カンファレンスとネッ
音楽×テック感あるヘッドフォン
トワーキングが核心だ。世界中から旬な人が集まって、近未来のテーマについて意見交換をする、そこに集まる人達がつながっていくところに本質的な価値がある。REP麻田浩さんの言葉を借りれば、「SXSWは勉強会」なのだ。

 音楽から始まって、映画、ITサービスと守備範囲を広げたSXSWの近年のホットなテーマは、ロボット工学、人工知能、医療技術(Med-Tech)VR/AR(仮想現実/拡張現実)だ。社会の課題を解決させ、世界を発展させるイノベーションに関する「これからのテーマ」が話し合われている。ドローンの話は一昨年くらいに一旦「済んだ」印象。ストリーミングサービスの是非や効用にについて話していたのは6年位前だから、今頃「ストリーミングサービスが根づくか?」みたいな話をしている日本はいくらなんでも世界の潮流に遅れ過ぎだね()

 デジタル技術の圧倒的な進化で起きる様々な軋轢や課題について一番最初に、深く広く、そして自由に話をされる場になっている。テキサスは独立国だったこともあってアメリカの中での反骨気質がある。アンチ・ハリウッド、アンチ・ワシントン、アンチ・シリ
テキサス州の形の看板
コンバレーという空気が自由な議論をするのに適しているのだろう。

 僕も自分がプロデュースするアーティストを連れて行ったり、SXSWにはずっと関わってきた。2012年からはトレードショーの中でJAPAN PAVILIONをつくり、昨年からは街中にも拠点を持つJAPAN HOUSEを始めた。他国が積極的にやっているのに日本だけ置いてきぼりなのが悔しいと思って、大声での言い出しっぺ的役をやっただけで、プロデューサーといえるほどの仕事はできてないけれど、今年のJAPAN HOUSEは意義深かったと自負している。

 日本ではマツコロイドのTV番組とTVCMで一般的に知られている石黒浩大阪大学教授は、ロボット工学の分野で世界的に評価されている研究者。神戸大学の杉本医師も最先端
技術の外科医療への導入の先駆者の1人だ。この二人をSXSWが主宰する公式セッションで登壇できるように後押しをした。特に石黒先生は1700本あるセッションの内の選りすぐりのTOP50、「フィーチャードセッション」に選ばれ、アンドロイドと人間の英語での雑
石黒ロイドと話すアメリカ人
談実験などをステージ上で行い、最後はスタンディングオベーションだった。アメリカで一番部数が多い大衆新聞USATodayのトップページを飾るという大きなオマケも付いた。

 JAPAN HOUSEはオースティン最大の繁華街6番街のライブハウスを2日間借り切って、これらの公式セッションの受け皿として、フォローアップのトークイベント、関連するブース展示、ミートアップイベントなどを行った。2日間で4000人以上の来場者。他にも、NEDOが推薦する技術系スタートアップのピッチイベントや、NTT研究所の技術を取り入れたYun*chiのライブ・ショーなど充実した内容で、JAPANの技術やコンテンツへの興味を喚起することができたと思う。インタラクティブ部門のディレクターHugh Forrestにも登壇してもらったが、彼もJAPAN HOUSEを高く評価してくれていた。運営自体はバタバタで課題がたくさんあったけれど、「勉強会+ネットワーキング」というSXSWを活用するフォーマットとしては、これまでに、日本はもちろん、他国でもやれてない成功モデルを見せることができた。

 先日AOI Pro本社で行った報告会には、120名程の熱心な参加者がメモを取りながら聞いてくれていた。前半はAOIproの研修チームによるSXSW2016総括もあって充実した内容
ホテルからオースティンを望む
だったので、みなさん満足して下さったようだった。
 その時にも申し上げたけれど、日本のテクノロジーとコンテンツの進化のためにSXSWを活用する動きは今後も広げていきたい。

 オースティンがコンテンツ活用の地方創生の、世界一の成功モデルだというのは去年もブログに書いたから、ここでは繰り返さないけれど、不動産価格の上昇率が全米一らしいオースティンの開発はますます進んでいるようだ。SXSW20174つのトレンドの一つは「Smart CityIoT homeと次世代交通」だから、ますます地方創生視点での重要度が高まる。やる気のある自治体をオースティンとつなぐ役割もやっていきたい。ちなみに、残りの3つは「AI&ロボティクスドリブンな未来」「VE/ARの更なる進化」「政治とテクノロジーコミュニティ」だ。

 音楽と映画の祭典から、ITサービスが加わり、近年は世界のイノベーションを牽引するイベントへと進化している。SXSWをウォッチすることは、世界のイノベーションの最先端を知ることに繋がる。

 「SXSWも変質したよね」という声も聞く。まあ成功すると僻みも含めてディスられるのは世の常だし、JAPAN HOUSEを運営すると、近年は「ゼニゲバ」ぶりを感じて、鼻白む気分になる時もあるけれど、SXSWの存在感は落ちるどころか、ますます大きくなっていくだろう。

トヨタiROAD
 そして、一言言っておきたい言いたいのは、SXSWは音楽祭から始まって、今も音楽をリスペクトしたイベントで、期間中はオースティンの街に音楽が溢れていること。そのことがSXSWの魅力を高めていることは間違いない。音楽とテクノロジーの美しい関係がここにはあるんだ。

 僕がエンタメ系スタートアップのアワードとしてのSTART ME UP AWARDSを有志の実行委員会で立ち上げ時も、関連イベントとした神奈川県真鶴町でクリエイターズキャンプ真鶴を始めた時も、頭の片隅ではSXSWを意識しているし、あの空気を吸ってきたから企画できたという思いも強い。
CommUを踊らせる

 SMUA2016のキックオフイベントを5/11にやるので、エンターテインメントとテクノロジーとスタートアップに興味のある人は、是非来て欲しい。

 THE BIG PARADECo-Founder鈴木貴歩さんがユニバーサルミュージックから独立してエンタテック・アクセラレーターを始めた。「エンタテックenter-tech」という言葉を広めようというに賛同して、僕も最近使うようにしている。同じような問題意識でニューミドルマン・ラボもやっている。第4期に集まったメンバー多様で、意識が高くて早速、刺激をもらっている。時代の変革期には、新しいエネルギッシュな人材が必要だ。日本のエンタテックシーンを活性化していきたい。
 
 SXSWTwitterが登場するのに20年かかった。SMUACC真鶴がSXSWのような影響力を持つのには、20年位は必要なのかもしれない。その頃に日本社会は、世界はどうなっているのか?不安もあるけれど、ポジティブ思考で、イノベーションの行末に、きちんと関わっていけるように頑張りたい。


2016年1月12日火曜日

劇伴作曲家になる方法について、今ここ。

 2013年から作曲家育成「山口ゼミ」を始めて、発見したことはいくつかあるけれど、その内の一つが、アニソンと劇伴をやりたい若い作曲家がとても多いということ。アニソンについては、ある程度予想がついていたことだし、フライングドック、スターチャイルド、ランティス、アニプレックスなどレーベルも具体的で、上層部は知己の人たちなので、コンペ情報も取れるし売り込むルートもある。チャンスをつくってあげることは難しくない。実際、CWFはアニソンで結果が出始めている。ところが、劇伴については、めちゃくちゃハードルが高い。

 BUGは以前インスト系のアーティストのマネージメントをやっていたので、劇伴音楽の現場の状況は知っている。スタジオミュージシャンという言葉が健在な頃で、高いギャラをもらいながらスタジオを渡り歩いて稼ぐことと、自分がやりたいジャズ・フュージョン系の作品をリリースするアーティスト活動とスタジオミュージシャン活動をバランスよく両立させてあげることが僕らマネージメントの役割だった。縁にも恵まれて、村上ポンタ秀一、佐山雅弘、村田陽一といった日本で最高級のミュージシャンと仕事をすることができたのは、僕にとって財産になっている。音楽を仕事にする素晴らしさと大変さと、たくましさを学ばせてもらった。

 その頃は、劇伴というのが業界用語だと思っていたけれど、誰も普通に使うようになっているみたい。ドラマや映画、アニメやゲームなどにつくサウンドトラック、映像を引き出すために作られる音楽だ。坂本龍一、久石譲、菅野よう子といったスター音楽家がいる。

 困ったことに、この分野に新しい人が入るのは非常に難しい。情報も無いし、どうすればよいかわからないと思う。おおまかに言うと、方法論は2つ。一つは、既に活躍している劇伴作曲家ないしは劇伴音楽に関わっている事務所に、丁稚奉公的にアシスタントをして人脈をつくっていくこと。もしくは、TAKU TAKAHASHI☆やKen Araiのようにアーティストとして認められて、監督に望まれること。どちらもハードルは非常に高い。

 人と人との繋がりが大切な世界だし、特にテレビドラマなどは、追い詰められた音楽家が「もうできません」と書き置きして、連絡がつかなくなる(シャレではなく起こりえること)リスクがあり得る。沢山の人とお金が動く世界だから、そういうリスクは100%避ける必要がある。才能だけでなく人格や覚悟も問われる世界なのだ。そもそも劇伴作曲家コースの受講資格が、山口ゼミを受講経験者とするのは、そういう理由だ。人柄がわからなければ、キメの細かい指導はできないし、無責任に人を紹介できない。

 フジパフィシックミュージックというフジサンケイグループの会社は、フジテレビが関わるドラマ、映画のすべての劇伴を仕切っている。たまたま何だけれど、その責任者の吉田雅裕という人は、僕にとって、音楽業界で古い付き合いで最も信用できる友人の1人だ。ビクターエンターテインメント時代に、暴れん坊との評判の村上ポンタ秀一のアルバムを作り、今は作詞家として大活躍しているこだまさおりや、ちょっと話題を呼んで後に崩壊した東京エスムジカを一緒にメジャーデビューさせた。苦楽を共にした、いわば戦友だ。『プロ直伝!職業作曲家の道』を著すときに、劇伴の章でインタビューさせてもらった。新しい劇伴作曲家がなかなか出てこないという悩みもあるようで、今回の「山口ゼミ・劇伴作曲家コース」は、全面的にコーディネートしてもらっている。onemusicという硬派な日本一の劇伴音楽系音楽事務所に協力していただいた。

 劇伴音楽というのは、あくまでメインは映像。そこをひきたてながら、魅力的な音楽を主張していくということが必要だ。大切なのはバランス感覚と即戦力のスキル。同時に、フレッシュなオリジナリティ無いと、わざわざ新しい作家を使いたいとは思われない。新たな劇伴作曲家を世に出すことは、針の糸を通すような難しいことだけれど、突破口の作り方はわかった。実際、去年の劇伴作家コースを受講した山口ゼミ4期生、CWFメンバーの植田能平は、最後の公開添削、「劇伴作家としての自分のデモをつくる」というテーマで認められて、フジパシフィックミュージック預かりになり、運良く1月クールのドラマで劇伴作曲家デビューできた。「山口ゼミ」に入った頃から、「どうしても劇伴作家になりたい」と訴え続けていたから、その思いが届いたのかもしれない。僕から見ると課題もまだあるのだけれど、結果をだしたことは尊い。去年の望年会で「山口ゼミMVP」として表彰した。本当に頑張って欲しい。

 僕としては、「劇伴音楽事務所での丁稚奉公」、「アーティストして認められた上で監督から望まれてのデビュー」。以外の「第三の道」を山口ゼミ/CWFで作りたいと思っている。事務所に入るにしても、3つくらいは実績が必要だ。Jポップのコンペをやりながら、劇伴音楽ができたらクリエイターとしてはハッピーだとも思う。実際、「ザクセスヘブン」というゲーム&ショートアニメでは、CWFメンバー4人が連携してサウンドトラックを創ったという実績もできた。

 業界標準、完全プロ志向、という山口ゼミの基本コンセプトに基づいた「劇伴作曲家コース」。おそらく、日本で唯一のプロの劇伴作曲家になれる可能性のある講座だ。興味のある人は、まずは「山口ゼミ」の門を叩いてみて欲しい。


2016年1月5日火曜日

2015年TOP20から占う2016年〜コンテンツビジネス・ニュースキュレーション

メールマガジンの新年特別号として昨年1年間のニュースをランキングにしました!2015年を振り返りながら、2016年を占ってみましょう。

<第1位>
日本で音楽ストリーミングサービスが本格始動
 何と言っても、2015年のTOPニュースは、「ストリーミング元年」になったことですね。
  4月からAWALINE MUSICAPPLE MUSIC、そして、秋にはGoogle Play MUSICが始まりました。着実に有料会員を増やしていたようです。いよいよ今年は真打ち「Spotify」ですね。       
  元旦の「独断的音楽ビジネス予測」では、今年中に有料会員200万人と予測しました。

Apple Music」が国内サービス開始 月額980
3500万曲聴き放題の定額制音楽配信サービス「Google Play Music」が日本でもスタート 

<第2位>
ダンス営業、規制緩和=一部のクラブ、24時間も改正風営法が成立
 日本にとってプラスですね。クラブはポップミュージックの培養をするところですし、都市カルチャーの魅力を高める観光資源です。ホステスが接待する水商売と区別される方向が見えたことは、素晴らしい一歩ですね。FDJ(日本ダンスミュージック連盟)を始めとした関係各位の努力に感謝と賛辞を捧げたいです。クラブ経営者は、未成年飲酒喫煙やドラッグの排除などにきちんとした取り組みを続けてもらいたいです。
 関係者はその後も、努力をされています。ハローウィンではこんなニュースもありました。素晴らしいですね。
「渋谷ハロウィンをキレイにした人々とZeebra氏とキンコン西野氏。」

<第3位>
音楽著作権管理団体「イーライセンス」と「JRC」が事業統合へ エイベックスが筆頭株主に

 これも素晴らしいニュースでした。この件については、ブログにまとめているので、興味のある方はこちらをご覧ください。
「日本の音楽ビジネスを進化させる、JASRACの対抗軸、NexTone設立の期待」
 
<第4位>
訪日外国人旅行者1631万人 去年上回る
 政府が決めた数値目標が、前倒しで大幅に上回るというのは珍しいのではないでしょうか?
 円安効果もあって、着々と外国人観光客が増えています。インバウンドは日本経済の最重要分野ですね。外国人にもわかりやすく日本を説明していく仕組みが必要になっています。これからの日本人は、外国人への観光業が主産業だと認識することがとても重要だと思います。音楽業界もやるべきことが山積です。
 インバウンド×カルチャーについて、今年はしっかり整理して書いていきたいと思っています。

<第5位>
Netflix、新規格付けと日本進出日決定のニュースで8%アップの史上最高値
 映像でもサブスクリプション見放題型のサービスが本格化した年でした。Netflixはローンチパーティにもお招きいただきましたが、久々にバブリーで、楽しかったです。日本進出すると株価があがったのは、日本市場への評価でもあるので、嬉かったです。

<第6位>
在京民放5局による見逃し配信サービス「TVer1026日に開始
 Netflixに刺激されたのでしょう。見逃し配信サービスも始まりました。民放5社が揃ったのは、テレビ業界の危機感の現れなのでしょうか?良かったですね。
 色分けとしては、huluは日本テレビの子会社、Netflixと近いのはフジテレビ、TVerの旗振りはTBSという感じのようですが、ユーザーの利便性を高める方向で競い合って欲しいです。

<第7位>
中国の音楽産業が2020年までに450億ドル越えを目指す国家計画を発表
  12月に飛び込んできた驚愕のニュースでした。真偽を見極めないといけませんが、中国は「国家計画」でいろんなことが決まる国です。なんでも大袈裟に言う国なので、かりに十分の一だったとしても、日本の音楽市場の約2倍です。
 おそらくは、欧米が作り、僕らが常識と思っている著作権ルールではなく、自国のメリットを最大化する横車を押す的な、「俺様ルール」を考えてくることでしょう。それでも僕らはその市場に戦いを挑まなければいけないと思います。引き続き、注目していきたいです。
 ちなみに、この発表の前ですが、アップルは中国でサービスを開始しています。先見の明だったのでしょうか?
「アップル、驚きの価格でサブスク型音楽配信「Apple Music」を中国で開始」

<第8位>
アリババがドラマ制作 日本の漫画「ドラゴン桜」、通販と連動
 中国関係でもう一つ。このニュースには驚かされました。出版エージェント、コルク佐渡島さんの仕事ですね。素晴らしいと思います。日本のコミックを原作に、中国の巨大なコンテンツプラットフォーと組んで、ドラマを作って、アジア全域で展開するというのは、先駆的ですし、今、日本のコンテンツ業界が最も取り組むべき枠組みの一つです。音楽分野でもこういう発想でやるプロデューサーが出てきて欲しいですね。もちろん僕も頑張ります。

<第9位>
ドローン、住宅密集地やイベント会場で原則禁止に 改正航空法が成立
 世界の中でも素早い対応でよいですね。記事が若干ミスリードなのですが、禁止が目的というよりは、禁止地区以外は飛ばせるというドローンの促進のための施策です。JUIDA(ドローン協会)もできましたし、今年は「ドローン元年」になる気がします。エンタメとの接点で僕も取り組んでいくつもりです。

<第10位>
"Instagram、月間アクティブユーザー数が4億人突破--Twitterを上回る
 Instagramのユーザー数がtwitterを上回ったというニュースもありました・。10秒以内の動画や正方形以外の写真の投稿もできるようなっていますが、魅力は、簡単にスタイリッシュな画像が投稿できることですよね。僕も好きです。広告売上も伸びているようです。
 実は、僕は随分前から、音楽版のInstagramっていう考え方で新しい音楽サービスが出てくることを期待しています。

<第11位>
激変のインターネット人口動態。インドが4億人に達し、二位のアメリカを追い抜く!
 中国とインドがインターネットビジネスの主戦場になる時代が来つつありますね。日本のコンテンツ産業には楽な戦いではないですが、心の準備はしておきましょう。

<第12位>
Pandoraが時価総額の1/3以上を失う…Apple Musicに敗れたか
 これは意外なニュースでした。Apple Musicは有料のオンデマンド型サービスで、無料のリコメンドラジオ型Pandoraは、ユーザーニーズもマネタイズモデルも違う、全然別種のサービスです。強いて言えば、Apple Music内のBEATS1というネットラジオとの比較で、「No.1インターネットラジオチャンネル」というポジションが脅かされたという見方はできるかもしれません。

<第13位>
日経がフィナンシャル・タイムズ買収、親会社から1600億円で
 
 こんなニュースもありましたね。日本のメディアの国際化が進む契機になることを期待します。

<第14位>
アマゾンがメイシーズを抜いて全米ナンバー1のファッション小売企業に
 アメリカの小売は、アマゾンが多くの分野で勝者になりそうですね。ネット書店から始まったはずのアマゾンが物流の力で、ECを牛耳ろうとしているようです。日本の楽天は、ここに入る余地はあるのでしょうか?

<第15位>
アップルの求人サイトから見えるApple Musicの未来
 良記事なので改めて紹介。Apple Musicだけでなく世界の音楽ビジネスの未来が見えてくる気がします。ここで募集されている職種、こういう職域が必要になってくるのだという風に読み取れました。

<第16位>
ビートルズやピンク・フロイドで有名な「アビーロード・スタジオ」、欧州初の音楽テクノロジーに特化したインキュベーターAbbey Road Redを設立
 とても興味深い取り組みです。音楽スタジオの新しい在り方。作品創造の源であるという本来の意味でのスタジオを今の時代に置き換えると、こういう選択肢になるのは当然です。日本でもやりたいです。

<第17位>
音楽ストリーミング「Songza」「Beats Music」終了。2015年に消えた音楽スタートアップが残した功績と影響
 
これも音楽プロガージェイコウガミさんによる、スタートアップの功績に注目した良記事。巨大企業にエグジットするやり方がアメリカらしい展開ですね。
 日本でも音楽シーン、音楽ビジネスを活性化するスタートアップが出てきて欲しいです。僕も微力ながら、START ME UP AWARDSやニューミドルマン・ラボを通して、応援していきたいと思っています。

<第18位>
世界ウェアラブル市場、2100万台出荷で規模が3倍に。1Fitbit2Apple
 だいぶ伸びてきましたね。ウェアラブルデバイスにおける音楽の役割、ビジネスチャンスについて真剣に考えるべき時期になっています。様々なサービスが視覚は奪い合っていますが、聴覚は比較的ライバルが少ないので、ウェアラブルデバイス装着時にしっかり存在感を示したいですね。ただ、メディアが変われば、楽曲の作り方も影響を受けることは必須です。クリエイティブプロデュース的にも知恵の出しどころだと思います。

<第19位>
LINE LIVEの産み出すインパクトとは?
 ウェブメディアとして存在感を示し始めているTHE BIG PARDEの記事です。
 動画生配信も注目の分野ですが、ツイキャスなニコ生などとは違うアプローチで興味深いですね。これまでSNSやネットメディアは、ニッチな存在で「束」になって存在感を示すことが多かったですが、LINE LIVEは公式チャンネル一つで推しています。地上波テレビよりも選択肢は少ない訳で、最大公約数的なマスメディアなあり方です。日本で、若年層を中心に圧倒的なリーチ数を持つLINEのマスメディアがどのように育っていくのか、興味あります。

<第20位>
トヨタ自動車、Preferred Networksに出資
 AI分野に10億円。期待したいですね。家電産業が壊滅的になり、東芝の粉飾決済など重電分野も揺らぐ日本の製造業で、自動車産業は世界のトップランナーを走り続けて欲しいです。そんな中で、自動運転の分野への投資は重要ですね。

<圏外>
YouTube Red」正式発表。広告無し、オフライン再生可能、特別番組有、月額10ドル
 動画サービスといえば、YouTubeの有料版というのも大きなニュースですが、僕はあまりピンときていないので20位以内に入れませんでした。圧倒的なユーザー数とコンテンツ数があるので、問答無用に成功するのかもしれませんけれど。

DeNA南場氏「会社の大事な判断を年寄りにやらせるな」 新しい時代のサービスの作り方 
 キャッチコピー的にわかりやすいこともあって、シェアが広がったインタビュー記事でした。
音楽業界にとっても耳の痛い発言で、まさにレコード会社が業績不振な理由を一言で表せばこうなると思います。正確に言うと、経営者が高齢なことが問題なのではなく、現状を変えずに「ゆっくり沈む」方向を選んでいることですし、デジタルに対して無知、ないし敵意を持っていることですね。
日本の音楽業界は、新しいテクノロジーを活用することで再生するのだと僕は信じています。

初音ミク、「Mステ」30周年特番に生出演 バーチャルシンガーとして初
 ここまで来たかって感じですね。

<社会編>
パリ同時多発テロ。最新の死者数は140人、テロリスト4人を殺害
 世界が不安定化を象徴する歴史のエポックになる事件だったかもしれません。
 本当に痛ましい事件でした。 エンタメも音楽も平和な生活があって、はじめて成り立つものです。日本も無関係では居られないです。

<残念編第1位>
佐野氏デザインの五輪エンブレム使用中止へ 組織委が方針固める
   去年最も残念だった記事です。僕の意見は、シンプルです。五輪エンブレムは盗作では無かったと思います。おそらくアメリカなら法廷に持ち込まれて、十中八九佐野氏が勝ったでしょう。ただ、東洋的な感覚では、作品たけでなく人格も問われます。他の仕事で明らかに盗作をしていて、そのことに対する真摯な謝罪も無いような人には、国家的なプロジェクトとのデザインの仕事をする「資格」が無いというのは、僕も同感です。
 僕は広告業界のクリエイティブ、特にデザイン系の分野はあまり知らないのですが、広告クリエイティブのフィールドから反省の声が出てこないのが、個人的には残念です。佐野さんが活躍できてしまっていた、日本の「広告デザイン界」自体が社会的に信用を失ったということへの危機感を、その分野で仕事されている方は強く持つべきだと思います。サントリーの景品など、あまりにも杜撰で、プロとしての矜持が感じられない仕事ぶりでした。
 これからの日本の財産は、日本人のクリエイティブ能力です。クリエイターを大切にしないと、日本の国力は下がっていきます。広告業界全体で、今回の問題をしっかり反省するべきだというのが僕の個人的な感想です。

<残念編第2位>
NOTTV」サービス及び「モバキャス」サービスの終了について
 これも残念な記事で、ここから学習しなくてはいけませんね。地上波TVをデシタル化して帯域を空けた総務省の政策は正しかったと思いますが、活用されないと意味が無いですね。
 個人的にはフジテレビの責任が大きいと思っています。新しいメディアに既得権側のプレイヤーが参加してもサボタージュしがちです。そうじゃなくても新しい発想が出てくるのは難しいですね。今回も「テレビ局的な価値観でドコモの資金を使って、良いようにやられてしまった」という印象
を拭えません。総務省的にはドコモがA級戦犯でしょうが、僕には被害者にも見えてしまいます。
 同様に空いた帯域の新しいメディア「Vlow」はラジオの進化系として使われようとしているので、期待しましょう。TFMと新しいパートナーのコンビネーションから新しいメディアが生まれると良いですね。
 NOTTVは電波帯域を「返納」するそうですが、何に使うのでしょうか?4K,8Kなどの高画質対応とするのが有力のようです。経済的合理性を持った、新しいプレイヤーが出てきて欲しいです。ベンチャーも参加できる電波オークション的な仕組みを考えたいですね。

2016年が良い年になることを祈念します。
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