2015年7月14日火曜日

クリエイターが主役の時代がやってくる。クリエイターズキャンプ真鶴やります。

 今年もやっと「デジタルコンテンツ白書2015」の原稿を書き上げた。様々なデータを見て、時代の流れを確認して、「白書」だから客観性を担保して、バランスを取りながら書く作業は骨が折れる。今回は、ニューミドルマン養成講座の受講生有志がアイデア出しなどで手伝ってくれたので、去年よりだいぶ楽になった。署名も「山口哲一+ニューミドルマン研究会」になっている。

 改めて思ったのは、レコード業界が音楽ビジネスの主軸だった時代は本当に終わったんだなということ。音楽業界で普通に仕事している人なら誰でも10年くらい前からは予想できたことだけれど、2014年に、コンサート入場料収入がCD売上を上回ったというのは象徴的な出来事だ。
 新しい才能を育てるのには、エネルギーも時間も必要なのだけれど、以前は、その「バッファー」はレコード会社が持ってくれていた。メジャーデビューの契約は3年間でアルバム3枚が普通だったし、アーティストマネージメントに専属契約料やアーティスト育成費、事務所援助金などいう名目の予算があった。丸山茂雄さんが社長の頃のEPIC/SONY5年契約が基本で、見込んだアーティストは必ず売ると言われていたのは、本当に遠い昔のことだ。レコード会社は自社を維持するのが精一杯で、新しいアーティストを育成する余裕は無くなってしまっている。

 では、日本の音楽がダメになっているかというとそんなことは全然無い。他国に比べれれば音楽市場は健在だし、Jポップは海外にもたくさんのファンが居る。ビジネススキームを組み直せば、大いに有望だと思っている。
 コンテンツ輸出を観光という今の日本の国策のために、音楽業界が貢献できることは多いと思う。

 そんな中で、改めて軸として大切なのは、30代、40代のサウンドプロデューサーと言われる人たちだ。彼らが実際には音楽を作ってきている。レコード会社に余裕があった時代に恩恵も受けていた世代だ。

 ELT、浜崎あゆみ、木山裕策Home」等、数々のヒット曲を産みだした多胡邦夫さんは、地元高崎市と協力してTAGOSTUDIO」という素晴らしいスタジオをプロデュースした。日本にプロフェッショナルスタジオが新たに作られるなんて、10年以上無かったと思う。高崎は、BUCK-TICKBOØWYを産んだロックの町で、新しいアーティストの育成に貢献したいのだそうだ。地元にUターンして住んでいて、「山口ゼミ」のゲスト講師を年に2回位頼んでいるのだけれど、高崎から車で駆けつけてくれる。
 僕も次にバンドのプロデュースをする時は、高崎のTAGO STUDIOを制作拠点にさせてもらうつもりだ。思いのある人が作ったスタジオでレコーディングすると、バンドマジックが起きる確率が高まるものだということを経験則的に知っているから。
 
 最近、こんなニュースも見た。元JUDY AND MARYTAKUYAさんが、福岡にスタジオを作って生活拠点にするというのだ。

 あれ?TAKUYAさんも博多出身だっけと思って、ググったら京都出身だった。アジア視点で見た時の福岡の地政学的位置、行政のIT導入やベンチャー支援の施策などが理由だとしたら慧眼だ。

 クリエイティブ力が高くて、ビジネス構造も理解している彼らが、音楽業界の未来に危機感を持って、後進の育成や環境改善に目を向けてくれているのだとしたら、当然とも思うけれど、とても嬉しい。

 彼らと同じ志かどうかは話してみないとわからないけれど、僕が取り組む音楽業界の「環境改善施策」は「クリエイターズキャンプ真鶴」だ。

 日本の音楽業界が不況とかオワコンとか言われる理由は、実は一言で説明できる。他業種では当たり前の「デジタルファースト」をやらないから、だ。何故できないかは、何度か書いてきているので、本稿では割愛するけれど、内側からの改革だけには限界を感じて、音楽業界外との連携に、ここ数年の僕のエネルギーは注いでいる。

 STARTME UP AWARDSは、既存のメディアコンテンツ業界、権利者団体などと、若い起業家、スタートアップの出会いの場を作り、支援していくために去年始めた。今年は、デジタルコンテンツ協会の後援をいただいて、経済産業省主催のデジタルコンテンツEXPOの一環としてやらせらもらえることになった。(エントリー受付中なので、エンタメ感のある起業志望者は、是非応募してください。)

 昨年行った第一回のSTART ME UP AWARDSの時に併催した、「ミュージシャンズハッカソン」を発展させたのが、今回の「クリエイターズキャンプ真鶴」だ。


 音楽をテーマにしたハッカソンは、日本でもいくつかあったけれど、プロの音楽家が参加したという例は聞いたことがなかった。正直、イマイチ、イケてないという印象を持っていた。同じことを浅田祐介さんが感じていて、サウンドプロデューサーたちを巻き込んだハッカソンをやれば、音楽シーンにも刺激を与えられるし、ハッカソンとしても成功するのではないかということになった。結果は、期待以上だった。
 浅田祐介曰く「最近、あんなに目を輝かして音楽をつくること無いんじゃない?」、プログラマーやデザイナーとミュージシャンが、喧々諤々、和気あいあい、ものすごい高い熱量の場で、面白いものはたくさん出来た。


 昨年最優秀賞だった「MUSIC DJ」は、身体の動きに合わせて、曲が変わるという仕組みだけれど、今年の神戸ビエンナーレの入賞作品となった。9月から展示されるそうなので、観に行きたいと思っている。

 Jポップの隆盛を担ってきた日本のサウンドプロデューサーたちのクリエイティビティと人間力の高さは知っていたつもりだったけれど、こういうことを続けていけば、何かとんでもなく面白いことが起きるなと確信した。

 そもそも、製造業では優位性を持ちにくくなっている日本が国際社会の競争で戦う時
に、残されている強みは、クリエイティビティではないだろうか?
 日本人クリエイターは貴重な資源だという認識をもっと日本は持つべきだ。近年のビジネストレンドをリードしていSXSWの今年のテーマは「ダイバーシティ(多様性)」だった。それが本当ならますます日本人にはチャンスがある。宗教的な禁忌も少なく、融通無碍に創作するのは日本人の得意とする分野だ。

 「クリエイターズキャンプ真鶴」は、地元の起業家たちと町役場が強力にバックアップしてもらってやる。海と森と昭和を想いださせる町並みがある美しい町だ。(ソトコト8月号の表紙になっているので本屋に行ったら見てみてください。)

 ハッカソンと同時に、「コーライティング・セッション」もやる。3人一組で2日間で0から曲をつくって、日本人アーティストにプレゼンする。海外の作曲家にも各国大使館経由で声を掛けた。まだ発表はできないけれど、びっくりするような大物音楽家が参加したいと言ってくれている。日本に興味のある音楽家は多いようだ。

 真鶴町岩海岸にある民宿を全部借りきって、泊まり込みでつくるというやり方にした。畳とちゃぶ台のある部屋で、どんな名曲が産み出されるか楽しみだ。

 この2つは実績のあるプロ向けだけれど、閉じたプロジェクトにはしたくないので、一般向けのコーライティング・ワークショプ(日帰りキャンプ)もやるし、最終日9/27()の、コーライティング試聴会〜ハッカソン発表会〜アフターパーティに参加できる「オーディエンス券」というのも発売する予定だ。
 興味のある人は、是非、参加して欲しい。

 毎年、恒例のイベントにして、音楽を中心にオールジャンルのクリエイターが集まり、創り、出逢う、クリエイターが主役のフェスティバルとして続けていきたい。来年からは、映像クリエイターや写真家、振付家なども参加してもらえるようにしていくつもりだ。
 「クリエイターズキャンプ真鶴」は、シルバーウィーク明けの9月最後の週末だ。今から本当に楽しみにしている。
 
※「ミュージシャンズハッカソン」や「コーライティング・セッション」は、プロの音楽家を対象に招待制でやっているので、公募は行っていません。興味がある方は、フェイスブックなどを使って、僕に連絡ください!
●クリエイターズキャンプ真鶴公式ページ

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