2014年10月28日火曜日

日本にはエンタメ系スタートアップが必要だ!よね?? 〜Start Me Up Awardsやります!

 「ニューミドルマン養成講座」やってます。受講生は22名。どんな人がくるか心配だったけれど、意識の高い、やる気のある人達が集まってくれて、毎回の講座で会うのが楽しみになっている。
 ゲストの皆さんもありがたい。「ニューミドルマンはこうあるべきですね」って、それほど詳しく説明している訳では無いのに、僕のコンセプトを理解して、それを超える提案や意見を披露してくれる。今回の6人は、「音楽業界改革の同志」と思える人達を選んでお願いしたけれど、間違ってなかった。嬉しい。自分が講師じゃ無い時に、観に来てくれたりして、ギャラリー席が華やかだ。



 僕がやろうとしているのは、日本の音楽ビジネスの未来像を描くことだ。「ニューミドルマン」という概念を提唱しているのだから、そもそも「音楽ビジネス」というカテゴリー自体も無意味になるし、様々な業界の障壁も溶けていくというのが前提だ。
 ただ、ITジャーナリストな人達や未来先取り風の文化人が言いがちな「どうせなくなるだから壊しちまえ」的な論旨には、僕は絶対、組みしない。日本の音楽業界の仕組みには素晴らしいところがたくさんあるので、それを発展的に継承したい。「プロ作曲家育成」なんて看板を掲げて「山口ゼミ」を始めたのもそういう思いからだ。ニコ動を中心としたUGM型のムーブメントは、とても面白いと思うけれど、未来の日本の音楽をボカロPだけに託す気持ちにはなれない。正統派のプロ作曲家、実力のあるサウンドプロデューサーを育てたい。

 前置きが長くなってしまった。Start Me Up Awardsというエンタメ系スタートアップを対象としたアワードを立ち上げたのも、動機はまったく同じだ。他の業種もそうなのかもしれないけれど、日本のメディアコンテンツ系の業界(いわゆるギョーカイ)は、独自の発展をして、ガラパゴスに蛸壺化してしまっている。全体のパイが右肩上がりの時は良
かったのかもしれないけれど、もうとっくに限界だ。蛸壺の内側だけを見ていると、「もう俺の業界はダメだ」って思うけれど、二歩くらい上から俯瞰して眺めることができると、たくさんのビジネスチャンスが眠っている。
 「業界横断型プロデューサーが必要」というのは、以前から言われていることだけれど、業種を超え、既成概念を疑って、グローバル市場への視点を持てば、日本人の強みを活かせるところはたくさんある。

 日本のコンテンツ業界ができていないのは、「デジタルファースト」。新しいテクノロジーをビジネスに活かすという当たり前のことに対して、遅れている。欧米は、ITベンチャーが音楽と一体となって、共に発展しているのに、日本は対立していると言うよりは、無関係だ。距離が遠い。Start Me Up Awardsは、ITベンチャーや起業家志望者と、音楽業界、メディア業界、既存の大企業が接点を持てる場にしていきたい。まだ間に合うと信じている。実際、このプロジェクトをやろうと思って動き始めたら、いろんな人達が共感して、jointしてくれた。朝日新聞メディアラボ、リクルートテクノロジーメディアラボ、スペースシャワーネットワーク、トーマツベンチャーサポートなどなどなど。大企業も新しい部署をつくって、ITとベンチャーの流れに接点を持とうとしている。ベンチャーキャピタルもあっという間に集まって、12社以上が最終審査を見に来てくれる。官製ファンドの「産業革新機構」もオブザーバー参加してくれる。

 ハッカソンもやる。アーティストやサウンドプロデューサーが、チームに必ず1人いるというハッカソンというのは「世界初」らしい。欧米では、音楽家とプログラマーが一緒に何かをつくるって、珍しくもなんともないけれど、当たり前すぎて、わざわざハッカソンとして組成しなかったらしい。
 米国でハッカソンを覗きに行くと感じるのは、本当に自由と自主性に溢れているなと言うこと。僕らは日本でやるので、その哲学はリスペクトしつつ、日本人らしいきめの細かさのある運営をしたい。チーム組成も丁寧にやりたいし、その日限りではなく、継続してフォローアップしていきたい。 
 
 起業家および起業家志望のみなさん!是非、Start Me Up Awardsに参加して下さい。書類締切は11/10です!
 エンターテインメントの定義は自由。食やファッションはもちろんのこと、B to Bだろうと、医療だろうと、やっている人が「これはエンタメだ」と思えばOK

 音楽に興味のあるエンジニアやデザイナーは、ハッカソンに申し込みを!浅田祐介キャプテンを中心に意識の高い音楽家が、下は20代から、還暦を超えた「4人目のYMO」松武秀樹さんまで、集まってくれている。イケてるエンジニアの参加が待たれる。
 ここから、新しいサービスや表現がきっと産まれることだろう。今からワクワクしている。歴史の針を動かそうよ!



2014年10月11日土曜日

「西野カナdarling現象」で再認識するクチコミパワーと新ランキングRUSHの魅力

 最近、注目&応援しているネット上のクチコミを楽曲の人気指標化したRUSH。毎週金曜日に発表されたら必ずチェックするようにしている。音楽プロデューサーとしての定点チェックとしてだけでなく、CREAwebで「来月流行るJポップ」というコラムを連載するようになって、リリース前の人気曲がわかるので助かっている。

 10/10付のRUSH総合ランキングを見ていたら、813日リリースの西野カナdarlingが突然、総合3位に入ってきたので、びっくりしてリサーチしてみた。

 おそらく理由は、ある女子高生による、このツイートだ。
 「Darling」の歌詞に合わせた漫画を描いて、ツイートしたのが公式RTだけで3万を超えている。

 早速、「RUSHニュース」でも分析していた。この記事の内容におおむね賛成だ。

 Yahoo!のリアルタイム検索の結果を見ても、ツイートの1回目と、続編の漫画を投稿した2回目のツイートと、そのタイミングが明確に連動している。
 そして、注目が集まったことに合わせて、iTunes Storeのダウンロードのチャートでも1位になっている。仮にRUSHのランキングアップだけだとしたら、ネットで騒がれただけでしょ?という判断もできるけれど、実際に売上にも結びついているのがすごい。TwitteriTunes Storeの相性の良さは、日本でも欧米でも一般的に語られていることだけれど、今回も証明されている。

 今回の西野カナ「darling」は、歌詞が女性に人気だという噂は耳にしていたけれど、歌詞の世界に触発された無名の女子高生の漫画が、発売2ヶ月後に人気を再燃させるとは誰も予測できなかっただろう。レーベルのPRはリリースタイミングに集中しがちだし、発売日にピークを持って行くのがマスプロモーションの常道だったりするけれど、ユーザーに刺さるのは、新譜リリースタイミングだけでは無いのは当然だね。


 RUSHチャートでは、3週間前にも嵐の数ヶ月間のリリース曲がチャートに入ってきていた、何だろう?と思ったら、ハワイ公演の影響だった。ハワイは彼らにとって縁の深い土地だからファンにとっても特別なのだろう。周知の通り、ジャニーズ事務所は音楽配信を原則的にやっていないので、iTunesなどへの跳ね返りは無かったけれど、もしライブに合わせて、期間限定でも配信をやっていたら、コアファン以外にも広がるチャンスだったかもしれない。

 オリコンは、相変わらずCDの売上という「所有」のチャートに固執している。年間アルバムチャートなら一定の意味があると思えるけれど、週間シングルチャートは、人気楽曲の指標としては機能を失ってしまって久しい。
 Billboardのジャパンチャートは、ラジオのオンエアー回数、ダウンロード数に加えて、レンタルCDでの人気も反映できるルックアップ数(CDをリッピングしてCDDBにアクセスした回数)まで反映されたランキングを作っていて、すごく頑張っているなという印象。

 そんな中で、新たに出てきたネットのクチコミを人気楽曲の指標にしたRUSHの魅力は、「近未来予測的なランキング」であること。RUSHのアナリストと話をしてみると、リリース1週間前に、オリコンランキングは、ほぼ予測できていて、複数買いなどで「作られる」ランキングと楽曲そのものの人気も区別して見ることができているそうだ。既に解析の仕組みは出来ていて、どうやってわかりやすく伝えるかを検討しているという。日本語で書かれたブログとTwitterの全てを解析して、文脈によるネガティブ、ポジティブなども考慮し、数々のノイズ的な投稿を削除する仕組みだというが、毎週見ていると、リアリティを感じられるランキングになっているのがわかる。

 RUSHは、現在、グロースハッカー的に関わってくれるスタッフを募集しているそうだ。音楽メディアや音楽サービスに興味のある人は、応募してみてはいかが? 
 ●RUSHランキングを世に送り出すグロースハッカー募集

 新しいテクノロジーやメディアを活用すれば、音楽市場や音楽シーンを活性化するんだなと、今回の「西野カナdarling」現象で、改めて思った。だからこそ、LINE MUSICもSpotify Japanもアメブロの音楽サービスも、一日も早く始まって欲しいと心の底から願っている。