2013年1月23日水曜日

作曲家志望者向け「山口ゼミ」始まる。「教えるは教わる」だね。


 今週から「山口ゼミ」が始まった。23人の受講生による8日間のコース。

 人に教えることを仕事にするのは初めてだ。何となく、「本業で仕事が無くなると専門学校で教える」みたいなイメージがあったし、自分が教師向きとは思えないので、一切、断って、やってこなかった。
 方針を変えたのは、執筆や講演の仕事もやるようなった(これもびっくりなんだけど)僕自身の変化もあるのだろうけれど、それ以上に、環境の変化が原因だ。今の音楽業界は、新人アーティスト、クリエイターを育てる「場」が少なくなってしまっている。僕自身、非常に危機感がある。以前は、メジャーデビューしてからの数年間が、プロフェッショナルのサウンドプロデューサー、作詞家作曲家育成の「場」になっていた。今はどんどん減っている。

 この辺のことは、年頭にドリススピンに書いたので、詳しくはこちらをどうぞ。


 僕もこれまでは、デモテープを送ってきたミュージシャンを選んで、こちらから声を掛けて、育成してきた。アルバイトしてた奴が年収1000万円位にするやり方は、いくつか実体験もある。(その位の段階で、勘違いや自己過信で、ワケのわからない言動をし出すような例を見たのは残念だった。お世話になった人たちに迷惑を掛けて、消えていった。そんな反省も活かしたい。「人間教育」も大切と学んだ。)
 これまで、新人アーティストをプロデュースする際には、仕事の範疇なので、もちろん、「持ち出し」でやってきた。「山口ゼミ」は、みんながお金を払って来てくれる。
 単純な比較はできないけれど、これまで、自腹でやってきたことを、ギャラをいただいてやるっていう気分もある。これまでは、こちらが選んだ人を育成したけれど、今回は、僕が選ばれて、育成をするという側面もあって、いずれにしても、不思議な気持だけれど、背筋が伸びる感じ。

 受講してくれた人たちの才能は、まだ見極められないけれど、熱意は感じている。ヒット作曲家が出てくることを後押ししたい。というのは、いわゆる「公式見解」。もちろん「ブレイク」する人が出てくることは期待も支援もするけれど、マネージメントビジネスサイドにいる僕が中心になって始めた以上、スキーム自体で新潮流をつくりたいと秘かに思っている。
 プロ野球では野村監督が、「野村再生工場」と言われていたけれど、プロの眼で発想を変えると、意外な伸びしろがあったりするものだ。「副塾長」伊藤涼さんも(作詞もするけど)策士なので、Co-Writingのユニット組成とか、これまでにない方法論に挑戦したいと思っている。
 いずれにしても、8日間のコースを一回やっただけで、簡単に結果が出ることでは無い。継続していきながら、プロフェッショナルのクリエイターを産み出す大きなファームをつくっていくのが、このプロジェクトにおける僕の目標だ。

 今年は年頭から、大言壮語が続いているけれど、1年後くらいには、誇らしげに成果を書けるように頑張りたい。
 
 伊藤涼「コンペに勝つ方法」のデモテープ公開添削の3回以外には、3人の素晴らしいゲストをお呼びしている。
浅田祐介さん、島野聡さんは、超一流のサウンドプロデューサーで、尊敬する友人だ。長く音楽シーンの第一線にいる秘訣を聞き出したい。佐藤純之介さんは、ランティスのヒット・プロリュデューサー。「年間、何曲リリースするんだよ??」ってくらい多忙を極めるレコーディングなのに、無理を言って「アニソンの現場」を語って貰うことにした。
このゲストの3回は、トークイベント的でもあるので、単発でも聴講できるようにしたので、興味のある方は、のぞきに来て下さい。

 「教えるは教わる」だと、昔から言うけれど、まさにそんな感じ。この「山口ゼミ」で、僕自身が何を学べるのか、実はその事が一番楽しみだったりする。


「山口ゼミ」について熱く語っている、伊藤涼さんとの対談が、3回に渡って、MUSICMAN-NETに掲載されてます。興味のある方はお読み下さい。
●「山口ゼミ〜プロ作曲家になる方法〜」開催記念 特別連載
 


2013年1月4日金曜日

独断的音楽ビジネス予測2013<続編> 〜ストリーミングとソーシャルメディアが主戦場になった時にアーティストとマネージャーとITベンチャーがやるべきこと〜

前回の「独断的2013予測」を読み直して、概念先行で抽象的すぎたような気がしたので、自分の実業にも引きつけつつ、もっと具体的な事を書きたいと思う。

僕は、この2年間位、ユーザーから支持される音楽サービスの在り方や、あるべき音楽業界の姿について、考え続けている。実は、正直に言うと、僕の頭の中では、ある程度、結論めいたものが、まとまってきている。
大まかな方向といくつかのあり得るシナリオ、そのためのリスクやタスクは、見えてきているんだ。問題は、その認識を踏まえて、自分が具体的に何をやるのか?抜け駆けしたいとか思わないし、そんな状況では無い。むしろ異なったレイヤーで同時進行することが必要だ。自分一人では何もできないので、こういうブログを書くことで、色んな人と繋がっていきたい。日本で音楽ストリーミングサービスが本格化するのは今秋以降だろうから、これから書くことは、2014年の予測と言うべきかもしれない。でも、準備は、今すぐ始めたい。

●ストリーミングサービスが主流になると、ヒット曲でポルシェが買えなくなる?

 前回も書いたように、僕は本気でストリーミングサービスを関連サービス含めて3000億円以上にするべきと思っている。レコード業界は、最優先で取り組むべき事はそれだろうと。
 2011年のパッケージ(CD+DVD)売上が3600億円で、2012年は微増という状況なので、ストリーミングサービスを育てれば、長期的に6000億円以上の売上が確保できる可能性がある。そうすれば、レコード業界の仕組みは、概ね維持できる。もちろん、改革して貰わないと困る部分はあるけれど、良い部分もたくさんある。産業規模として維持できる事は重要だ。

 ただ、事務所やアーティストの立場になると、微妙に違う。音源(原盤)からの売上が6000億円超というのはマクロの話で、内訳は変わってくる。Spotifyの分配などから考えると、原盤と著作権側に入ってくるお金が、ざっくり55~65%位だけど、その売上は、楽曲の再生回数で等分されるのが原則だ。これまでは、一度買ったCDやダウンロードした楽曲は、何度もユーザーに聞かれても売上にはならなかった。ストリーミングでは違う。再生回数に応じて、印税が入ってくる。この際の母数は、これまで発表されている全ての楽曲でだ。総売上が聞かれた回数で分割される。何が言いたいかと言うと、新曲でヒットを出しても、突出した印税額にはなりにくいということ。ストリーミングで聞かれることが一般化すればするほど、そうなっていく。

では何をやるべきか?

●ストリーミングサービスに付随して売れる商品開発をやろう。

新曲を発表してユーザーが気に入られた=ヒット曲とできた時に、その曲を何度も聞いてもらうだけでは、これまでほどの印税額は期待できない。もちろんCDなどのパッケージの売り上げが伸びるというのはあるだろう。もちろんやるべきだ。アーティストの姿を認識させて、パッケージ購入に結びつける努力は重要だ。

でも、それはこれまでもあったこと。僕は新たな収益をつくりたいと思う。ソーシャルゲームにおけるアイテム課金の様なイメージだ。ストリーミングサービスのプラットフォームで好きな楽曲ができたら、何度も聞いていると欲しくなる、デジタルコンテンツの「新商品」を開発したい。できればそのために大きな費用を掛けずに済むコンテンツにしたい。ジャケット用に撮った写真やライブ写真が素材になり得るだろう。UGM的なスキームも活用できるかもしれない。LINEのスタンプも参考になる。動画もありだけれど、通信環境への負荷が少なくて済む容量にしたい。さて、何がいいだろうか?

ヒントになるのは、CDの購入特典だと思う。これまで僕たちは、CD店でのイニシャル(発売日の仕入れ分)の購入促進のために、おまけを付けてきた。タワーレコード用にはこれ、TSUTAYA向けにはこちら、と、店別のユーザー特性に合わせて分けることもある。レコード会社の宣伝担当と事務所のマネージャーが知恵を絞って、購入意欲が高まるものを考えてきた。工夫の方向が似ていると思う。
●ストリーミング周辺の関連アプリ開発が重要になる

ストリーミングサービスが音楽体験のベースになると、そのプラットフォームを使ったアプリが重要になってくる。ストリーミングの代表的サービスSpotifyもアプリ戦略を積極的にやっている。
 詳しくは、この記事をどうぞ。

 最近のソーシャルメディアは、オープンID戦略をとるのは普通になったよね。初めて訪れたサイトにフェイスブックやツイッターIDでログインできることが多い。音楽ニュースをサイトで見たら、Spotifyやレコチョクなどのボタンが付いていて、自分が登録している音楽サービスを選んで、クリックすると紹介している曲がフルサイズで聴けるという状況になるのはもうすぐだ。
 様々な種類のアプリがたくさん出てくるだろう。この状況もビジネスチャンスに結びつけたい。Spotifyもツールと考えて、自分たちのアーティストの人気を高め、コンサートのチケットやアーティストグッズを売るのだ。

 ただ、できれば独自アプリをつくりたい、アーティスト主導だけでなく、ユーザーに支持されるサービスとセットで新しいアプリを提供できれば、収益が期待できる。
 アプリ開発者と音楽プロデューサーのノウハウを融合させて、ヒットアプリを出したい。
 実は音楽やアーティストに関する情報は、断絶されていて、信頼できる情報の紐付きができていない事が多い。ユーザーの嗜好性と音楽やアーティストのまつわる多様な情報を掛け合わせることで、新たな需要を喚起できるチャンスは無数に眠っているのだ。

●ソーシャルメディア上での企業とアーティストのコラボの可能性

 ネット上で音楽を自由に聴くことができるようになり、ソーシャルメディアでのコミュニケーションの比重が上がってくると、企業とユーザーの関係に、アーティストや音楽を絡めるコラボレーションの可能性が高まるはずだ。企業はユーザーと「ロング・エンゲージメント」(=長期的な信頼関係)をつくっていくのがテーマになっている。マスメディアを使って「上から目線」で商品を売るのでは無く、ユーザーから信頼されてブランド価値を上げることが重要だと広告業界でも言われるようになっている。この「ユーザーと長期的な関係をつくり、ブランド価値を上げる」は、まさにアーティストマネージメントがやってきた事だ。商品やブランドとアーティストや楽曲を組み合わせて、ユーザーと美しい三角形をつくっていくと、新たなビジネスチャンスが産まれると僕は信じている。
アメリカでは、既に始まっている。例えば、「ミュージックディラーズ」というサイトでは、12000以上のアーティストと550以上の企業が登録されていて、様々なマッチングが行われている。サイトはこちら。

 企業とアーティストのマッチングについては、「OKmusic」が、やりたいと言ってくれている。いつの間にか日本最大の音楽専門SNSとなっている「OKmusic」は、最近、フリーペーパーmusicUPSも事業譲渡で加わった。親会社は日本最大のQandAソリューションを持つ「OKWave」だ。面白い事ができそう気がしている。

●「MAKERS」発想で、新たなハード、再生プレイヤーをつくる!?

 アプリやウエブサイトだけではない、ハードにもチャンスは眠っていると思う。ライフスタイルと親和性の高い音楽は、ファション性と結びついて、
 一部で注目された缶バッチ型のプレイヤー「PLAYBUTTON」は、高すぎるパテント料のために広まらなかったけれど、商品開発としてのヒントは隠されていた。
 最近の注目書「MAKERS」によると、製造業にもデジタル技術革新の波が及び、「新産業革命」と呼ぶべき「少量多品種」の製造が可能になっているという。音楽の試聴行動を他の様々な要素と結びつける、全く新しいコンセプトの音楽再生プレイヤーに大きな可能性を感じている。一人一人に合わせて、カスタマイズできるプレイヤーなんていいんじゃない?

●ピンチはチャンス!新市場を創造しよう!

 音楽を取り巻く環境が変わって、従来の業界プレイヤーにはしんどい事も多い。業界人の末席の僕も例外では無い。ただ、ピンチはチャンスだ。新たな市場創造とビジネスのチャンスが眠っているのだ。
 音楽とITについて情報発信を続けてきたお陰で、ブログには書けないような情報も集まってきている。業界内の流れも感じる。既存のプレイヤーとの連携も重要だ。
 同じビジョンを共有できる人たちと力を合わせて早く結果を出したい。世代や既存の業界の壁を越えて、視野とノウハウとネットワークを融合することで、意外に簡単にできることもある。ある業界の非常識が、別の業界では常識というのはよくある話だ。
 このブログを読んで、ピンと来た方は、ご連絡下さい。志を同じくする人たちの連携していきたいです。

 僕は、近況を尋ねられると「ホームラン王を取りたくて野球を始めたのに、最近は、野球場の作り方とか、ストライク3つでアウトで良いと思いますか?とか、そんな事に時間を取られています」と、野球の比喩にして、苦笑しながら答えている。
 今年は、野球場増改築やルール改訂にも積極的に関与しながら、ホームラン王もとりたい!
 そんな年頭の抱負でもあるのでした(^^)/

 告知は前回と同じです。詳しくは下記をクリックしてみて下さい!

 ⇒毎週火曜日発行。絶賛監修中です。

 ⇒作曲家向けに8日間コースのセミナーをやることになりました。

⇒sensor新春スペシャル・ゲストは元SME社長の丸山茂雄さんです。お見逃し無く。

2013年1月1日火曜日

独断的音楽ビジネス予測2013 〜音楽とITの不幸な歴史が終わり、構造変化が始まる年に〜


   新年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します

 昨年は、トークイベントsensorを開始、二冊目の書籍を刊行メルマガの監修NHKFM「元春レイディオ・ショー」でラジオ初出演などなど、個人活動は充実していたけど、ブログの更新は、たった14回、、反省。「ちゃんと書こう」と思いすぎると後手に回るので、フットワーク軽く更新しよう。全く個人的なブログなのでカジュアルな文体で思ったことを直裁に書きますので、ご容赦を。
 さて、元旦につき、今年の音楽ビジネス予測。経済評論家が予測的中すると話題になるくらい、予測は当たらないもの。正月だけに当たるも八卦当たらぬも八卦ということで。ただ、去年の元旦の稿を読み直したところ、いい線いっているんじゃないかなぁ?


CD売上は、前年比一割以内の減少に留まる
2012年のCD売上は前年比微増。1割以内の減少という僕の予想を超える健闘ぶり。抜本的な改善策では無いけれど、頑張って売ったのは立派と言うべきだよね。

モバイル配信の変化もゆっくり進む
⇒ゆっくりとは言えないかも。モバイル向けは約4割減、スマフォを含むインターネット配信は約3割増というのが9月までの統計。配信全体では約25%減。この傾向はガラケーからスマフォへの転換が原因なので、まだ進行していくだろう。

ストリーミングサービスは本格始動しない
Spotifyが始まらないことも含めて、これは的中。

つまり、音楽ユーザーの消費行動はまだ大きく動かない
⇒レンタルCD業も前年比微増など、この予測も当たっていると思う。
 ということで、全体的な「読み」としては、概ね外れてなかったというのが自己採点なのですが、いかがでしょ?

 ということで、今年の独断的音楽ビジネス予測
 ずばり、変革が始まる年と予測したい!

 世界情勢も今年は構造変化が起こり得る年。米国ではオバマが再選、ロシアではプーチンが大統領に復帰。中国は習近平の10年が始まることになった。韓国も大統領が替わった。安倍政権は来夏の参院選というハードルがあるけれど、暫くは日本の政治も安定しそうだ。
 特に10年に一度の政治の季節を超えた中国との今後は重要だと思う。日本の音楽事務所が中国で稼げるようになるという意味では、もう少し時間が掛かると思うけれど、コンテンツ産業振興というマクロな視点は、日本に求められる役割はあるし、チャンスはあると思う。この事は、色々考えているので、改めて書くつもり。

 さて、音楽ビジネスの2013年は、、。

パッケージ売上は現状維持。CD店をネットと連動させて活用
 昨年の売上は大物ベテランアーティストのベスト盤の貢献も大きかったから、さすがに今年も売上増というのはさすがに難しいだろう。ただ、CDを買う可能性がある層(世代)に、あの手この手で買わせる努力は今年も続くと思う。特に、日本は、他国では姿を消したCD専門チェーン店があるのが大きい。タワーレコード、ローソンHMVTSUTAYAは、親会社に大きな資本があるし、新星堂も北関東の雄ワンダーコーポレーションが買収した。それぞれの企業戦略の中で、ショップを活用していくことだろう。
ITマーケティングの世界ではO2O(オンライントゥオフライン)という言葉が流行ったけれど、まさにCD店こそO2Oの拠点として適していると僕は思う。古い規格のCD(コンパクトディスク)に固執せずに、高音質パッケージやパーソナルクラウドとの連動(買った瞬間からスマフォで聞ける)にも取り組んで欲しい。最近は、アナログ盤の人気復活の気配もある。
 また、レコード会社主導のプレイヤー販売も課題だ。今、CDプレイヤーが壊れたときに、買い換えてくれるユーザーはどれだけいるだろうか?PCでも例えば、MacBook AirCDドライブは内蔵してない。タブレットはもちろん。CDを売るにはCDプレイヤーから売る時代になっていることを自覚すべきだと思う。アニバーサリー企画でのアーティストモデルなど、ソフトを売るためのハードの販売を考える時代になっているのだ。

●ストリーミングサービスが本格開始する
 欧米で500万人以上の有料会員を抱えるSpotifyが、遂に日本サービスを始まるようだ。詳しくはここには書けないけれど、レーベルとの交渉も始まっている。サービス開始は秋になるようだけれど、新しい音楽の聴き方、楽しみ方が広まっていくことは間違いない。
着うたの覇者だったレコチョクも、まもなくストリーミングサービスを始めるようだし、異業種からの参入の噂もある。聞き放題で月額課金というビジネスモデルと、友人達と音楽を共有するという習慣が広まっていくはずだ。
 個人的には、2015年に売上3000億円の目標で取り組んで欲しいと思っている。パッケージとストリーミングはカニバルどころか、相乗効果がある。パッケージ店網が残っている間にストリーミングサービスが広まれば、日本の音楽市場が、世界に類を見ない好バランスになる期待が持てる。

●レコード会社がインターネット上に音源を解放し始める
 ストリーミングサービスが広まるには、多くの音源の許諾窓口となっているレコード会社の姿勢がポイントになる。これが変わってきた。理由は二つ。欧米でストリーミングサービスが広まるとダウンロードやパッケージの売り上げにもプラスになる統計データがでてきたこと。ユニバーサルやワーナーは親会社が欧米だから情報も早い。レコード業界全体に伝わっている。
 もう一つは、ネット界隈では不評の違法ダウンロード刑罰化の影響。あの法案が通ったことで、レコード会社の経営陣は、合法にネット上で音楽が聴ける環境を提供するという社会的な責任を負った。DRMを外したり、ソニーミュージックエンタテインメントがiTunesに楽曲を提供したりというのもその流れの一環だ。

 レコード業界は、直接契約を結んだ「特約店」でレコード〜CDを売ってきたという歴史がある。配信でもガラケー向けでは「レコチョク」は成功した。そのせいで「自分の目の届くところでだけ売りたい」と思う性癖を持っていたけれど、そろそろ方針転換をしようとしてくれているようだ。膨大なカタログをマネタイズするためにも、一定のルールに則って、許諾を幅広く出していく方向を推し進めてくれることと期待している。

コンテンツの海外輸出が本格的にはじまる
 これは、予測では無くて、希望的観測と努力目標。
 経産省が計画している「クールジャパン」ファンド800億円の使い途に注目。これまで経産省は失敗し続けているので、安倍政権の指導力に期待したい。ただ実は、方法論は難しくない。韓国がやってきたことの真似をすれば良いだけだ。
 海外のメディア枠を買い、日本と海外のギャップで生じる日本の権利者の不利益分(の一部)をまかなって、日本のコンテンツをアジアなどの新興国で流せば、間違いなく結果はついてくる。今なら、まだ日本のポップカルチャーのブランドとコンテンツ力は有効だ。
 中期的には、海外売上が国内と同等になることを目指すべきだと思う。韓国は、自国の数倍の売上を海外からあげているのだし。

 機は熟している、言い換えれば、待った無しで今年を逃すと、衰退する。音楽業界にとってそんな分岐点の年。2013年は、本当に重要な年だなと思う。楽曲がデジタルファイルに変換できるようになってから続いてきた音楽とIT技術の軋轢の歴史が終わる年。
 個人的にも、テーマに掲げてきた、ソーシャルメディア活用、グローバル、異業種コラボレーションの3つを踏まえて、具体の結果を出す年にせねばなりますまいと、誓う正月であります。
新年早々、告知件!

⇒昨年10月刊行の『ソーシャル時代に音楽を"売る"7つの戦略』(リットーミュージック)の発展形としてメールマガジンを始めました。「音楽人養成メルマガ」は、毎週火曜日発行。 監修しながら自画自賛で申し訳ないですが、毎週、面白いなと思ってます。まだの方は是非、ご購読を!

◆「山口ゼミ ~プロ作曲家になる方法~
⇒作曲家向けのセミナーをやることになりました。8日間コースの「山口ゼミ」。充実の内容と自負してます。新米作曲家や、プロ作曲家志望者の方がいらっしゃったら、薦めてください!マネージメントする気持で熱血指導するつもりです。19日に説明会あります。
 
 「副塾長」の伊藤涼さんとの対談インタビューが、MUSICMAN-NETに掲載されてますので、ご覧下さい。3回シリーズで、1月8日に第3回が掲載予定です。
⇒sensor vol.6は、1月16日開催。なんと今回のゲストは、元SME社長の丸山茂雄さん。僕らにとっては、プロ野球選手が長嶋茂雄を招くような、バスケットプレイヤーがマイケル・ジョーダンと話すような、サッカー選手がペレと並んで座るような、そんな、光栄で緊張な機会です。既存の価値観を壊しながら業界のトップランナーであり続ける丸山さんのお話を聞いて、一緒に気合いを入れませんか?質問も大歓迎ですし、懇親会の時間もあります。
 ハピドラ相方のふくりゅう君も、Yahoo!個人ニュースにエンタメ分野初で選ばれるなど、コンシェルジュ業が絶好調です。
 3人と一緒にお酒を飲もうという方も歓迎!新年会ご気分でどうぞ。売切必至なのでお早めに。