2011年5月15日日曜日

文化人類学者になりたかった 〜東京エスムジカと国立民族学博物館〜

文化人類学の存在を知ったのは中学生だった。マセガキだった僕は、中公新書の『文化人類学入門』(祖父江孝夫著)を書店で見つけ、将来は文化人類学者になりたいと思った。今から思えば、70年代後半は、ちょうど文化人類学の勃興期だったのかもしれない。学者への願望は、高校に入ってバンドをやり始めて、あっさり崩れたけれど。性格的にも研究者は向いてなかったし。

 それでも、高校生の頃は小泉文夫という民族音楽学者がアイドルだったので、音楽プロデューサーとして、新人アーティストのプランニングを始めた時に、コンセプトの一つとして、「民族音楽の要素を取り込んだ東京発Jポップ」を掲げたのは、音楽業界の中では、「突飛な発想」と言われたけど、自分にとっては当然の帰結だった。そのアイデアは「東京エスムジカ」というアーティストで一つの形となった。ビクターエンタテインメントからアルバムを3枚リリースしているので、興味のある方は聴いてみてください


「東京エスムジカ」のコンセプトを組み上げる事ができたのは、欧米の西洋人からの視点に毒されずに、世界を相対化して見る感覚を、中学時代に文化人類学から教わったからだと思っている。

蛇足だけど、僕が、道を踏み外して、音楽にのめり込んだのは、ワールドミュージックではなく、高校時代にジャニス・ジョップリンリッキ・リー・ジョーンズプロフェッサー・ロングヘアマイルス・デイビスなどのアーティストからの洗礼が原因。
理屈っぽく言うと、「アフリカから奴隷として連れられた黒人が、アメリカで西洋音楽と融合してつくった音楽が、アメリカ資本主義と結びついて世界を席巻した時代に。極東に産まれた私も人生を間違えました」。なので、ニューオリンズが、俺の聖地。

 さて、昨日のこと。大阪の万博記念公園に音制連の理事として、東日本大震災チャリティーコンサートをお手伝いに行った。
(晴天にも恵まれ盛況のうちに成功しました。ご来場の皆さま、ありがとうございました。ご尽力頂いた関西の音楽業界関係者のみなさま、お疲れ様でした。)

 ちょっと隙をみつけて、国立民族学博物館(通称:みんぱく)に行ってみた。万博公園は、FM802のイベントなどで、何度も行っているのに、なかなか機会がとれずにいた。
 
「みんぱく」は最高。展示物の充実度、解説のわかりやすさ、超一級。全体にポップさも感じる。世界中の言語を語順別に分けて、タッチパネルを使ったインタラクティブな展示など、子供から大人まで楽しみながら学べる設備が整っている。
 古今東西の人類に関する全ての文化をフラットな視点で捉えるという、文化人類学の基本姿勢が、きちんと貫かれている。日本の博物館には珍しく撮影OKというのも、気持ちいい。


 この姿勢は、おそらく初代館長梅棹忠夫さんの功績。昨年80歳で亡くなった梅棹さんの活動に関する特別展「ウメサオタダオ展」も観た。
 戦前からの梅棹氏の探検の記録、膨大なフィールドワークノート、スケッチなどが年代別に展示され、業績の大きさで圧倒される。京都人らしいユーモアと反骨精神のある人柄も伝わってきた。


それにしても、長生きするのは大事だね。もちろん濃い人生でなければ意味がないけど、一人の人間が一生にできることなど限りがあるからこそ、しっかり長生きしないと、できる事がもっと少なくなる。太宰治を読み耽った中学生の頃は、惜しまれて夭折する事に憧れてたけど、40代半まで生きながらえてしまった今となっては、健康に長生きして、頑固な爺さんになってやるんだ^^

 タイ人やインドネシア人シンガーをプロデュースしたり、グローバルな視野が求められる僕には、仕事上でも刺激になる。また行こう。


大阪万博記念公園内の国立民族学博物館「みんぱく」は、オススメです。

1 件のコメント:

池田光穂 さんのコメント...

文化人類学を学びたくなる気持ちに120%してくれるサイトです。
感心しました〜♪
僕のサイトにも是非遊びにきてください。
◎中高校生のための文化人類学入門
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/030414bunkaWB.html
◎文化人類学入門
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/0-culanthro.html